サバの世界へようこそ。日本の食卓に並ぶ主なサバは数種類あり、日本近海で獲れるサバや、遠く北大西洋で獲れるサバ、それぞれに旬があります。
本記事では、サバの種類ごとの特徴から、その旬の時期、そして栄養価について詳しく解説しています。また、新鮮なサバの見分け方や適切な保存方法、そして地域ごとに異なる郷土料理についてもまとめました。サバの旬を知り尽くし、最高の味を堪能しましょう。
目次
サバとはどんな魚?
サバは日本の食文化に深く根付いている魚です。まずは、サバの種類と特徴について詳しく掘り下げていきます。
サバの種類と特徴
日本で主に食されるサバの種類は「マサバ」「ゴマサバ」「タイセイヨウサバ(ノルウェーサバ)」の3種類です。
マサバは日本では最も一般的なサバです。緑色の背に銀白色の腹部を持ち、体側にはわずかな縞模様が見られます。脂のりが良く、うま味が強いのが特徴です。手に入りやすく、加工品として缶詰などにもなっていましたが、近年の漁獲量は減少傾向が続いています。
ゴマサバにはその名の通り身に小さな斑点があり、マサバと比べると小型です。脂のりに関してはマサバに劣るため、比較的さっぱりとした味わいになっています。独特の風味があるため、加工してサバ節などにも使用されています。
タイセイヨウサバ(通称ノルウェーサバ)は、北大西洋が主な生息域です。輸入されたサバといえば、主にこの魚種になります。マサバよりやや大きく、体の縞模様がはっきりしているのも特徴です。脂のりも良く、弁当・惣菜用としてよく使用されています。
日本各地でブランド化されている
日本で獲れるサバは、価値を高めるために各地方でブランド化されているものもおおくなります。代表的な例としてサバ好きでなくても聞いたことがある人が多いであろう「金華サバ」と「関サバ」について紹介します。
金華サバは、宮城県石巻市の金華山沖で漁獲され、石巻港に水揚げされたマサバです。石巻港で水揚げされたサバでも、基準をクリアしていないと金華サバとは呼ばれません。
金華サバは、通常のマサバよりもサイズが大きく、脂と身の旨味が強いにもかかわらず、後味がすっきりとしています。臭さがなく、醤油をはじくほど脂の含有量が多いのが特徴です。
特に旬の時期には脂がよくのり、大型のものは身が厚く引き締まっています。希少性と人気から高価で取引されており、近年では「幻の鯖」とも言われるほど貴重です。
「関サバ」は、大分県佐賀関漁協の漁師によって豊後水道の「速吸の瀬戸」という海域で一本釣りされ、生きたまま船のいけすに放されて漁港まで運ばれます。この方法により鮮度が保たれ、ストレスによる味の劣化も防がれます。
漁港に戻った後、魚の大きさを見極める「面買い」が行われ、新魚専用のいけすで一日落ち着かせるなど、品質管理が徹底されています。出荷の段階では、魚の血を抜く「活けじめ」と、仮死状態にして身を柔らかく保つ「神経抜き」が一匹ずつ手作業で行われます。
脂の量が年間を通じて一定であることが特徴で、これは「速吸の瀬戸」に生息するサバが回遊せず、一カ所に居つく珍しい生態によるものです。
サバの旬の時期
日本近海で獲れるマサバやゴマサバから、遠く北大西洋の海域で獲れるノルウェーサバまで、それぞれのサバに旬があります。ここでは、これらのサバの種類別の旬の時期について、詳しく解説していきます。
種類別の旬の時期
サバの代表的な種類とその旬の時期について説明します。
マサバは11月ごろから2月ごろにかけて最も脂がのっており、この時期に漁獲されたマサバは「秋鯖」や「寒鯖」と呼ばれ、味が良いとされています。産卵期を終えて痩せた後、秋から冬にかけて再び脂肪を蓄えるためです。
地方によって旬は前後しますが、全国漁業協同組合連合会が運営するサイト「プライドフィッシュ」によると、たとえば神奈川県で漁獲される「松輪サバ」は10月~12月が、茨城県で漁獲される「茨城常磐のまさば」は11月~1月が旬とされています。
ゴマサバは6月ごろから9月ごろです。マサバの旬が秋〜冬なので、夏場はもし選べるならゴマサバがおすすめです。
高知県で漁獲される「土佐の清水さば」は旬が遅めで、10月~2月とされています。
タイセイヨウサバもマサバと同じく、11月ごろから2月ごろが旬になります。主に北大西洋で漁獲され、日本に輸入されてくるのは特にノルウェー産が多いです
サバの栄養価と健康への効果
ここでは、サバに含まれるこれらの栄養素と、それらが私たちの健康にどのように影響を及ぼすのかを詳しく見ていきましょう。
サバに含まれる栄養素
サバに含まれる主要な栄養素には日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によると、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどがあります。
たんぱく質は可食部100gあたりに約20.6g含まれています(マサバの数値、以下同)。たんぱく質は身体の組織を構築し、修復するために必要な栄養素であり、健康な筋肉や骨の維持に欠かせません。
脂質もサバの特徴的な栄養素で、100gあたり約16.8g含まれています。サバに含まれる脂質の中には、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれており、心臓病のリスクを低減する効果があるとされています。また、コレステロール値の改善にも役立ちます。
ビタミンに関しては特にビタミンDが豊富で、100gあたり約5.1μg含まれています。ビタミンDは、骨の健康を維持するために重要であり、カルシウムの吸収を助けます。
また、ビタミンB群も豊富で、特にビタミンB12が100gあたり約13.0μg含まれており、赤血球の形成や神経系の健康維持に寄与します。
ミネラルでは、カリウムが100gあたり約330mg含まれています。カリウムは、血圧の調整や心臓の健康維持に役立ちます。リンやマグネシウムも含まれており、これらは骨の健康やエネルギー代謝に重要な役割を果たします。
新鮮なサバの見分け方
サバは傷みやすく、鮮度が特に重要な魚です。幸い、新鮮なサバを見分けるためのいくつかの明確なポイントがあります。ここでは、新鮮なサバを見分けるための具体的な方法を詳しく解説します。
一尾丸ごと買う場合の見分け方
サバを買う際は切り身の状態が多いと思いますが、丸ごと一尾を選ぶ際のポイントも一応紹介しておきます。これは、サバの種類に関わらず共通しています。
まず、サバは鮮度が落ちると目の中が白っぽく濁り、目玉がしぼんできます。目玉がみずみずしく、黒く澄んでいるものを選びましょう。
購入する際、可能であればエラの色も確認しましょう。新鮮なサバはエラが鮮やかな紅色をしています。薄いピンク色や茶色っぽいものは鮮度が落ちている可能性があるため、避けるようにしましょう。
そして、鮮度が落ちたサバは全体的に柔らかくなります。触ったときにやや固く、腹部に弾力があるものを選びましょう。
サバは鮮度が命ですので、購入時にはこれらのポイントを忘れずにチェックしましょう。
切り身で買う場合の見分け方
切り身の状態で選ぶ際には、以下のポイントに注意してください。
まず、 身割れ(身に亀裂が入ること)がなく、皮にハリのあるものを選びましょう。
もし切り身にあばら骨がついていれば、そこも確認してください。腹側を見て、あばら骨が腹の肉の中にしっかり隠れているものが鮮度が良い証拠です。
皮と身の間も見ておきましょう。この層は脂肪層なので、厚いほど脂がのっています。また、身の間に白っぽく“サシ”が入っているサバは、脂がたっぷりのっている証拠です。
これらのポイントを押さえることで、新鮮でおいしいサバの切り身を見分けることができます。
サバの保存方法
サバにはアニサキスという寄生虫が含まれることがあり、これを避けるためには適切な処理と保存が欠かせません。
ここでは、サバを安全に保存し、おいしく楽しむための方法を詳しく解説します。アニサキスのリスクを避けるためのポイントや、冷凍保存の際の注意点など、サバを扱う際に知っておくべき重要な情報を紹介します。
サバに多いアニサキスに注意を!
アニサキスはサバや他の海産魚介類に寄生する線虫類で、生または不十分な加熱・冷凍処理の状態で食べると食中毒を引き起こす可能性があります。主な症状は、食後数時間から数日以内に発生する激しい腹痛、吐き気、嘔吐、下腹部痛、腹膜炎症状です。ただし、アニサキスによる死亡例は報告されていません。
鮮魚を一尾丸ごと購入した場合は、すぐに内臓を取り除き、鮮度を保つために冷やして持ち帰りましょう。じゅうぶんに冷凍(-20℃で24時間以上または-18℃で48時間以上)された魚介類を選ぶか、十分に加熱(中心温度60℃で1分以上)してから食べてください。
特に、シメサバなどの自家製で冷凍処理されていない加工品によるアニサキス症が多く報告されています。シメサバを作る際は、内臓や内臓周りの筋肉を早めに除去し、冷凍しましょう。ちなみに、酢や塩、しょうゆ、ワサビなどの調味料ではアニサキス幼虫は死にません。
冷凍保存の方法と解凍の注意点
サバは傷みやすく、冷蔵してもどんどん劣化していくと言われています。そのため当日中に食べきれないのであれば、冷凍してしまったほうが無難です。
サバを冷凍保存する際は、まず鮮度を保つための適切な下処理が重要です。
切り身の場合、表面の水分をキッチンペーパーで拭き取ります。一尾丸ごとのサバを保存する場合は、頭を切り落として内臓を取り除いた後、水気を拭き取ってからカットしましょう。
下処理が済んだら、空気が入らないようにラップで包んで冷凍用保存袋に入れ、冷凍庫で保存します。
傷みやすいので、解凍するときは調理する直前が望ましいです。解凍は冷蔵庫内でゆっくりと自然解凍しましょう。ただし、この方法だと解答までに数時間はかかるので、時間がないようであれば電子レンジで解凍しても大丈夫です。ただし、加熱のムラを防ぐために完全に凍っている状態から解凍するようにしましょう。
サバを使った郷土料理
サバは日本各地で愛される魚であり、その美味しさを活かした郷土料理が数多く存在します。最後にその一例として、福井県の「へしこ」、滋賀県の「鯖そうめん」、島根県の「すもじ」について紹介します。
へしこ
「へしこ」とは、福井県の若狭地域や越前海岸沿岸で伝統的に作られる郷土料理です。へしこは江戸時代中期から作られ始めたとされています。名前の由来には複数の説がありますが、最も一般的なのは、漁師が魚を樽に「圧(へ)しこむ」ことから来ているという説です。
へしこはサバを塩漬けにした後、こぬかと塩で半年ほど漬けることで作られます。塩味と旨みが強く、くん製にも似た風味が特徴です。食べ方としては、ぬかを落とし、適当な大きさに切って軽く炙る、お茶漬けや酒の肴、おにぎりの具、寿司のネタとして利用されます。また、最近ではチャーハンの具や、アンチョビのようにパスタやピザにも使われることがあります。
鯖そうめん
「鯖そうめん」は、滋賀県の湖北地域を中心に県内全域で食されている郷土料理です。歴史的には、京都へ海産物を運ぶ「鯖街道」のひとつが湖北地方に存在したため、サバが手に入りやすかったとされています。
「鯖そうめん」は、毎年4月に長浜八幡宮の祭礼「曳山(ひきやま)まつり」のご馳走としてもふるまわれ、ハレの日に食されることが多いです。また、春の農繁期には「五月見舞い」としても食べられています。
調理方法は、鍋に下味用の出汁と調味料を入れて沸騰させ、焼きサバを入れて煮込みます。煮汁が半分程度になるまで煮た後、サバを皿に盛り付け、煮汁は骨が入らないようにこして使用します。青ねぎを煮汁で軽く熱を通し、皿に盛り付けた後、煮汁に調味料を加えて沸騰させ、固めにゆでたそうめんを入れて味を付けます。最後にサバの周りにそうめんを盛り付け、煮汁をかけて完成です。
すもじ
「すもじ」は島根県の郷土料理で、特に雲南市木次・三刀屋地区で名物とされています。この地域は出雲地方と広島県を結ぶ交通の要衝として古くから栄えており、日本海沖で水揚げされたサバが各地へ運ばれる重要な地点でした。
すもじは、サバを主材料としたちらし寿司の一種で、サバを焼いてから酢飯にほぐして混ぜ合わせることで作られます。焼きサバは保存がきくため、古くから貴重なたんぱく質源として重宝されていたことも背景にあるようです。
サバ以外にも、人参や干ししいたけ、たけのこやかんぴょうなどの具材を加えることが一般的です。錦糸卵や刻みのりを散らして彩りを加えることもあります。