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外部センサーは偉大です
Reproの最も画期的な機能とは…
それは、よくフレンチのシェフとかが温度計を片手に、最適な火加減で煮物を作る、あれを機械が自動的にやってくれるということ。
それも1秒ごとに0.1℃の温度変化をキャッチして、微妙に火力を変化させるという人間にはできない正確さで。
だから鍋にセットして、直接煮汁の温度を測る「外部センサー」は「正確性を担保する」という意味で偉大です。
ですから、外部センサーが使える料理には極力、外部センサーをご使用いただきたいと思います。
そうなんですが、そんな外部センサーも決して「万能」ではありません。
外部センサーが苦手なのは「粘性」です
仮に煮汁の温度が目標温度よりちょっと低かったとしましょう。その温度は外部センサーが検知し、Repro本体に「温度がちょっと低いよ」という信号が送られ、IHコイルによって鍋の底面が加熱されます。
鍋底面付近の温められた液体は、水のように粘性の低い場合は、対流による拡散などで煮汁全体を均一な温度に上昇させ、瞬時に外部センサーにも伝わります。(オレンジ色の矢印)
温度が上がったことを外部センサーが検知すると、Repro本体は再計算を行い、火加減を調整します。
問題は、このオレンジ色の矢印の「伝達スピード」と言うか「タイムラグ」です。
鍋底付近の温度が外部センサーに伝わるのにタイムラグがあるとRepro本体は「まだ温まっていない」と判断して、さらに加熱を続けてしまいます。
結果、グツグツになってしまい、目標温度を大きくオーバーシュートしてしまったりという事態が起きてしまいます。
そして「対流」が起きているものと起きていない(起きづらい)ものとでは、この「伝達スピード」には格段の差があります。
揚げ物の場合
例えば「油」。コラム記事「揚げ物をする時は、油をかき混ぜることの重要性」で詳しく説明しましたが、油は180℃ぐらいになっても対流が弱く、温度ムラができやすいので、こまめにかくはんしてあげないと、正確な温度管理ができません。
とろみの強いカレーやシチュー
例えば「とろみの強いカレーやシチュー」。
「とろみ」は対流を妨げる要因ですし、その強さによっては正確な温度管理を妨げることになります。特に冷蔵庫に一晩置いて、「ほぼ固体となったカレー」にむりやり外部センサーを挿したりするのは、かなり危険です。
固体とも液体とも言えない状態
例えば「固体とも液体と言えないもの」。
上の写真は、乾燥米麹の酵素「βアミラーゼ」で、デンプンを糖化させて甘酒を作っている初期段階の様子ですが、乾燥米麹が水分を吸ってしまい、固体とも液体とも言えない状態になっています。
粘性が高いのに頻繁にかくはんできず、低温調理なものは最悪
さらに問題なのは、こうした素材で、かつ頻繁にかき混ぜることができず、低温調理なものです。
例えば普通の揚げ物なら、しばしばシリコンへらなどでかき混ぜてあげれば、おおむね問題は解決するのですが、「低温調理で長時間加熱」となるとそうもいきません。
米麹から甘酒を作る場合など8〜10時間ぐらい60℃で保温します。そんな長時間かき混ぜ続けることはできませんし、そんなにふたをあけていたら温度が安定しません。
油の場合も高温で揚げるフライや天ぷらなどはまだしも、低温で長時間加熱する「コンフィ系」は、普通に外部センサーをセットしても、一定の温度にするのはかなりの至難の技になります。
「裏ワザ」は外部センサーの先端を鍋底にベタ付けすること
こんな時の「裏ワザ」は、結論から言うと外部センサーの先端が鍋底にぴったり付くようにセットすることです。
本来、外部センサーの正しいセットの仕方は、上図のように液面マーカーが煮汁の液面より下にあり、かつ先端が鍋底に触らないようにします。鍋底にセンサーの先端が触れていると煮汁ではなく、鍋底自体の温度を拾ってしまうので、温度変化に敏感になり過ぎてしまいます。
しかし、「裏ワザ」では、あえて外部センサーの先端を鍋底に接触させるようにセットします。
つまり、粘性のために「温度変化に鈍感になり過ぎている」のですから、あえて「温度変化に敏感になり過ぎ」にしてあげて、鈍感さと敏感さを相殺しようと言う目論見です。
本当にそんなことで鈍感さと敏感さを相殺できるのか?その詳細はRepro開発チームのレシピ「【裏ワザ】Reproでコンフィ」に書かれています。
結論から言うと、普通に外部センサーをセットすると、目標温度90℃に設定しても、実際の油温は88℃〜95℃の間で周期的に変化してしまいます。
しかし「裏ワザ」を使うと、88℃でほぼ安定します。
鍋の種類によって微妙に変わりますが(このレシピではストウブ ピコ・ココット・ラウンド22cmを使用しています)、やや敏感よりに触れて、狙った温度より2℃下がって安定しています。
90℃前後のコンフィの場合は、狙った温度より+2℃前後高く温度を設定してあげるとよいでしょう。
ちなみに「裏ワザ」で米麹から甘酒を作る場合は、60℃に設定していますが、これは設定温度そのままで、ほぼ安定しました。(この場合は、ストウブ ピコ・ココット・ラウンド26cmを使用しています)
こちらも作り方詳細はRepro開発チームレシピ「基本の甘酒作り」をごらんください。
まだまだ検証数が少ないので、すべての場合に通用するとは言えませんが、粘性が高くて外部センサーがうまく使えない=思ったよりグツグツしてしまう、と言う場合には、この「裏ワザ」を試してみる価値はあると思います。