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ブランマンジェとパンナコッタの違い
端的に言えば、おせち用に炊いた黒豆の残りをどう食べるか?で思いついたのが「ブランマンジェ」。
そもそも「ブランマンジェ」と「パンナコッタ」の違いもよく分かっていませんが、ブランマンジェがフランス、パンナコッタはイタリアのデザートと言う以外だと、ブランマンジェはアーモンド風味なのに対してパンナコッタはバニラ風味が効いています。
ちなみに今回のReproレシピは、単純化して「アーモンド風味なし」なので、アーモンド風味が欲しい場合には、アーモンドプードルを牛乳に加えて加熱し、風味を移してから漉したものを使ってください。
さらに、ブランマンジェとパンナコッタの違いと言えば、パンナコッタの方がブランマンジェよりちょっと固めに作るのかなあ、って感じでしょうか…
凝固剤の進化
で、今回のテーマ(レシピ)は「固さ」。
料理によって、どれだけ、どんな感じに固めるか?ということです。
このReproレシピでは、凝固剤に「イオタ・カラギーナン」を使用しています。
知っている人は知っているけど、知らない人はまったく知らない、この「カラギーナン」。
まずは誰でも知っている凝固剤からおさらいしていきましょう。
寒天
誰でも知っている凝固剤の代表格はやっぱり「寒天」。あんみつやみつ豆に入っているアレです。
ブランマンジェを寒天で普通に作ると、いわゆる「牛乳かん」になります。寒天はテングサ・オゴノリなど紅藻類の、つまり海藻が原料です。
歯ごたえは、ご存知のあの感じで、柔らか・ふわふわと言うよりサックリしていますね。寒天は90℃で溶けるので、一回作ってしまえば常温でも溶けないところは長所です。
そしてそれは「凝固力が最も強い」とも言い換えられます。
ゼラチン
そしてゼリーを作る時に使う「ゼラチン」。原料は動物の骨や皮から抽出したコラーゲンです。寒天がサクッとしているのに比べると、程よい口溶け感があり、配分によっては結構に「ぷるぷる感」を作ることができる反面、原材料が「動物性」のため、最近は「ビーガン」の方などに敬遠されるきらいもあります。
ゼリーを作る場合には60℃以上に加熱しますが、実際の融点は20〜25℃ぐらい。冷蔵庫で固めても常温に長い時間放置すると溶けてしまうのは難点のひとつです。
言い換えれば「凝固力は寒天よりやや弱い」とも言えます。
アガー
さて次は一般家庭でも使われ始めている「アガー」です。この写真は、Repro開発チームで作った「東方美人の水まんじゅう」です。濃く淹れた「東方美人」に「和三盆」で甘さを加えた水まんじゅうは上品な美味しさがあります。
アガーの主な原料は、海藻から抽出された「カラギーナン」と、地中海地方で古くから栽培されているマメ科の植物キャロブ(イナゴ豆)の種子から作られる「ローカストビーンガム」と言う増粘安定剤を混ぜたものです。
カラギーナンは、寒天と同じ紅藻類の海藻から作られており、「凝固力」が強いので、アガーはローカストビーンガムと混合することによって扱いやすくしています。
おかげで、ゼリーより柔らかく、だけどギリギリ水まんじゅうの形を保てるぐらいの凝固力を有しています。寒天などと違い、固まっても「透明感」があることがお菓子作りにの際にはステキです。
難点は、溶かす時に90℃まで温度を上げる必要がありますが、「ダマになりやすい性質がある」ことです。なので加熱前にグラニュー糖(砂糖)と一緒に均一に混ぜて溶液に溶けやすくし、一生懸命ダマにならないようにかき混ぜながら加熱するのが大切なポイントです。
また、酸性のもので溶かすと固まりにくくなるのも要注意です。
カラギーナン
そして最後は「カラギーナン」。工場などではよく使われていますが、まだまだ一般家庭には馴染みの薄い凝固剤です。もとはアイルランドのアイリッシュモスと言う紅藻類の海藻から抽出されていたものですが、最近は色々な紅藻類から作られています。
アガーのようにローカストビーンガムが配合されていないので凝固力自体は強いのですが、極めて少量を使用すると、絶妙の「ふわトロ食感」を生み出します。なので、コンビニなどで売られている「ふわトロ系」のプリンとかパンナコッタなどには、よくこれが使われています。
カラギーナンには、ι(イオタ)型、κ(カッパ)型、λ(ラムダ)型の3種類がありますが、今回使うのはイオタ型のカラギーナン。
ちなみにイオタカラギーナンの注意点は、牛乳などカルシウムを含んだ食品には凝固力が強化されますが、そうでないとなかなか固まりにくい、ということです。
なんでもかんでも固められるという凝固剤ではないのでご注意を。
この3種類が化学的にどう違うのか?そして使い道もどう違うのか?は、料理家の樋口直哉さんがnote記事で詳細に説明されているので、ご興味がある方は、そちらをごらんください。
Reproレシピ「ブランマンジェ(イオタカラギーナン使用)」
前置きの説明も終えたので、さっそくレシピの詳細を。
【材 料】
- 牛乳 200ml
- グラニュー糖 15〜20g
- イオタカラギーナン 0.4g
【道 具】
ここもイオタカラギーナンを使う場合の大切なポイントです。そもそも凝固力が強く食品工場などでの大量生産用の商品が多いので、ふわトロなブランマンジェを作るためには、「ごく少量」のイオタカラギーナンを加える必要があります。
アガーでは、同じようにブランマンジェ(パンナコッタ)を作る場合、牛乳200mlに約3gのアガーを加えるのに対し、イオタカラギーナンの場合は、たった「0.4g」。
という事で、おうちでイオタカラギーナンを扱う場合には、0.001g単位で重さを測ることができる「精密はかり」が必要になります。(写真の製品は食品用ではなく、装飾品(宝石)などを測るためのはかりですが)
手順1(イオタカラギーナンを正確に測る)
イオタカラギーナンの重量を正確に計測します。
手順2(グラニュー糖とイオタカラギーナンを均一に混ぜる)
グラニュー糖を入れた鍋にイオタカラギーナンを加え前後に振って、均一に混ぜます。
手順3(60〜70℃ぐらいに温めておいた牛乳を少しづつ入れてかき混ぜる)
イオタカラギーナンがダマにならないように、電子レンジなどで前もって60〜70℃ぐらいに温めた牛乳を少しづつ入れて、ミニサイズのシリコンへらなどでかき混ぜます。
手順4(90℃にかき混ぜながら加熱)
ある程度、混ざったらReproのスタートボタンを押して90℃まで加熱します。この時も終始シリコンへらなどでかき混ぜ続けます。
手順5(90℃まで加熱したら加熱終了)
90℃に到達したら、加熱完了です。ストップボタンを押します。
手順6(容器に取り分け、冷蔵庫で冷まして完成)
イオタカラギーナンのゲル化が始まる温度は40〜45℃です。放置していると固まり始めるので、手早く容器に取り分けます。
完全に固まるには冷蔵庫に入れて2〜3時間ぐらいです。
あとはお好きなトッピングをして完成です。
【最後に】
このレシピの詳細はこちら。
Reproレシピ「ブランマンジェ(イオタカラギーナン使用)
また、まだ一般家庭に馴染みの薄いイオタカラギーナン、以前に自宅で買ったものは1kgもあったので、このペースで行くと、たぶん一生かかっても使い切らないでしょう。
でも今回、Amazonや楽天を見たら「20g単位」での商品を見つけました。ちょっと割高にはなりますが、この機会にイオタカラギーナンでブランマンジェやパンナコッタなどを作って見るのも良いかもしれません。