どうしてもこの鍋が使いたい!キャリブレーション機能とは?

大前提は「公式アプリにプロファイルのあるものをご使用ください」ですが…

2023年現在 約300の鍋・フライパンのプロファイルデータが掲載されています

Reproで正確な温度管理をしての調理(いわゆる「プレシジョン・クッキング」)をしたい場合は、公式アプリに鍋プロファイルがあるもの(=すでに検証済みの鍋・フライパン)を使用していただくのが大前提です。(2023年現在 約300の鍋・フライパンのプロファイルが掲載されています)
でも、「うちにあるIH用の鍋をどうしても活用したいんだけど、プロファイルリストにないんだよなあ」という場合、選択肢は2つです。

(1)汎用プロファイルから、ご使用になりたい鍋の素材・容量が最も近いもので試してみる。
(2)キャリブレーション機能で、ご使用になりたい鍋のプロファイルを作成する。


ちなみに、外部センサーをご使用になる場合(煮物のみ)は、あまりプロファイルを気にしなくても、大体の温度はほぼ正確にコントロールできるのですが、どうしても外部センサーを付けたくない(もしくは付けられない)料理の場合は(1)もしくは(2)のいずれかが必要になります。
今回は(2)の「キャリブレーション機能」について説明します。

キャリブレーション機能とは?

Reproのキャリブレーション機能とは、非常に簡易的に、Reproが「独自のプロファイルを自動生成する機能」です。
公式アプリにリスト化されているプロファイルには、さまざまなデータが収録されており、作成する際には、人間が、1週間ぐらいかけて、かなり複雑な作業を行なっています。これをRepro自体が、比較的短時間で機械的に自動生成するので、当然ながら「制約」があることはご承知おきください。

(1)あくまでも簡易的なプロファイルで、温度管理の誤差は通常のプロファイルより大きい。

(2)キャリブレーション機能で生成できるプロファイルは「水温ターゲット・本体センサー・ふたなし」のみ。つまり「炒めもの」をすることはできません。


(3)0.5L刻みで、基準水量が0.5L〜2.5Lまでの鍋しかキャリブレーションできません。

キャリブレーションの仕組み

キャリブレーションの仕組みは、外部センサーを規定水量の水を入れた鍋にセットし、上のグラフのように、、40℃・70℃・90℃に自動的に加熱し、各温度帯を7分間キープします。
この時、外部センサー(=水温の実測値)と本体センサー(=鍋底外側の温度)が同時に温度を測っていて、その温度差を補正するパラメーターとして、プロファイルデータを自動生成するというものです。(実際には、もうちょっと複雑な計算をしていますが)

キャリブレーション機能の使い方

ともあれ、キャリブレーション機能の使い方を順番に説明しながら、もろもろを解説していきます。


まずセッティングモード>鍋キャリブレーションを選択します。

すると、まず鍋の素材の種類を聞かれます。
素材の種類は、「大分類」ということで、以下の4種類の中から選択してください。

ステンレス単層
ステンレス多層貼り底
ステンレス多層
ホーロー鍋


いったい自分の鍋はどれにあたるの?」というのが難しいところですが、この4種類を選択すると、さらに「小分類」の選択画面が表示されるので、詳しくはこれから画像付きで説明します。

「ステンレス単層なべ」とは

「ステンレス単層」を選択すると、次に小分類で、

ヤットコ鍋

薄手タイプ


の2つの選択肢が表示されます。

ステンレス単層ヤットコ鍋

中尾アルミ製ヤットコ鍋

まず「ヤットコ鍋」ですが、これはIHしか使えない(防災等の観点からガスコンロが使えない)最近の複合商業施設の店舗などで和食屋さんが使ったりする、ステンレス製のヤットコ鍋(取っ手がなく、ヤットコで掴んで運ぶタイプ)で、大体厚さが2.5mmぐらいあるものです。

ステンレス単層なべ(薄手)

パール金属製ステンレス単層両手鍋

こちらは、よくありがちな、スーパーやホームセンターなどでも見かける重量が軽めな薄手のステンレス製(0.6mm厚ぐらい)の鍋です。最近の家庭で使う鍋、特にお値段がそれなりにするものは、業界的に「クラッド(ステンレス・アルミ多層構造)」と呼ばれる素材が多く使われているので、「ステンレス単層」の鍋は必然的に業務用のもの、もしくは比較的安価なものが多いと思われます。

ステンレス多層貼り底とは

フィスラー プロフィコレクション両手鍋

実はステンレスならなんでもIHに使えるかと言うと、そうではありません。たまに「18-0」とか「18-10」とかステンレス鋼の種類が表示されているのを見たことありませんか?

わかりやすく言うと「磁石がくっつかないステンレス」はIHに反応しません。
この「18-0」とか「18-10」とか言う数字は、に何%のクロムニッケルという金属を混ぜ合わせているかを示したもので、この数字が大きくなればなるほど、IHに反応しなくなる(磁石にくっつかなくなる)けれど、その代わりとても錆びにくく耐久性が高まります
そこで、本体は錆びにくい(=IHに反応しない)ステンレスとアルミなどの多層構造の素材を使い、鍋底だけIHに反応するステンレス素材の「発熱体」を貼り付けたものが「ステンレス多層貼り底」です。
見分け方は簡単で、鍋底に明らかに異なる素材を貼り付けた二重構造が見えているはずです。
この手の鍋は、CRISTEL(クリステル)WMF(ヴェーエムエフ)、Fissler(フィスラー)などの海外ブランド鍋に多く見られます。(国産の鍋でも貼り底のものはありますが)
この「ステンレス多層貼り底」は小分類の選択肢は一つしかありません。

ステンレス多層とは

ステンレス多層の鍋は、前に説明した「クラッド素材」のもので国産の鍋にもよく使われています。主に熱伝導率が良いアルミニウムと、蓄熱性の良いステンレスを多層構造にした鍋で、多層構造の中にはIHに反応するタイプのステンレスも入っているので、「貼り底」部分の必要がありません。
難しいのは、各メーカーとも、熱伝導率とIHへの反応はもちろん、蓄熱性、耐久性、加工の美しさなどのバランスを競っているので、多層構造の「層の数」が異なると熱伝導特性も変わってきてしまうことです。
「ステンレス多層」を選択すると、小分類として

ステン・アルミ7層
ステン・アルミ3〜5層


の2つの選択肢が表示されます。

ステン・アルミ7層

ジオ・プロダクト両手鍋

ステン・アルミ7層は主に宮崎製作所の「ジオ・プロダクト」シリーズが採用しているクラッドで、他のクラッドの鍋より層の数が多く、蓄熱性と熱伝導率の両方をかなり高い次元でバランスさせています。ジオ・プロダクトの製品はほぼ公式アプリにリストアップされているので、キャリブレーションする必要はありませんが、他のメーカーでも少ないながら7層構造のクラッド製品があるため選択肢に入っています。

ステン・アルミ3〜5層

ビタクラフト コロラド片手鍋

「ステン・アルミ3〜5層」は、クラッドの製品で最もポピュラーなタイプです。公式アプリにリストアップされているものでは、VitaCraft(ビタクラフト)ZWILLING(ツヴィリング)などがこのタイプに当たる鍋を製造しています。
さて「ステンレス多層」の最大の問題点は、

「見た目では、それが何層構造なのかはまったく分からない。」

というところです。
残念ながら鍋の入っていた箱や取扱説明書の記載を見るか、メーカーのホームページなどで確認してみてください。

ホーロー鍋とは

ホーロー鍋は、鉄などの金属素材の上にガラス質の釉薬(ゆうやく)をかけて、高温で焼き付けたものです。当然表面のガラス質部分に割れが生じたりしない限り、素材が鉄であっても、さびることはありません。
「ホーロー鍋」を選択すると、小分類として、

鋳物ホーロー鍋(厚手)
鋼板ホーロー鍋(薄手)


の2つの選択肢が表示されます。

鋳物ホーロー鍋(厚手)

ストウブ ピコ・ココットラウンド両手鍋

これは、staub(ストウブ)LE CREUSET(ル・クルーゼ)VERMICULAR(バーミキュラ)などの鋳鉄(鋳物)をガラス質の釉薬(ゆうやく)でコーティングした鍋で、肉厚で蓄熱性が高く、煮込む系の料理などに最適なタイプです。

鋼板ホーロー鍋(薄手)

野田琺瑯 ルークキャセロール

こちらは国産の野田琺瑯富士ホーローなどの鋼板にホーロー加工した、ストウブなどに比べると薄手の製品です。軽く扱いやすく、かわいいデザインのものが多く女性にも人気です。

今回は例として大分類で「ステンレス多層」を選択してみました。

小分類は「ステン・アルミ7層」を選択。

水量を選択する

素材の選択を終了すると、今度は「水量」を選択する画面になります。
最初にお話した通り、基準水量が0.5L刻みで、0.5L〜2.5Lまでの鍋しかキャリブレーションできません。
ここで大事なことは、「基準水量使用する鍋の満水量の半分の水量」と規定していることです。
つまり選択できる最大水量が2.5Lですから、満水量で5.0Lの鍋までがキャリブレーションの対象になるわけです。
通常のステンレス製鍋の直径で言うと、だいたい14cmから20cmぐらいの鍋をキャリブレーションできると思ってください。

鍋に基準水量を入れてReproにセット

お使いになりたい鍋の満水量の半分が0.5L刻みピッタリになるとは限りませんから、その場合には最も実際の半分の水量に近い0.5L刻みの水量を鍋に入れ、Reproに置き、外部センサーをセットしてください。

この時、大切なのは、必ず「常温の水」を使うということ。
水温が28℃以上だとエラーになります。
決定」をタップすると、自動的に加熱が始まります。

キャリブレーション実行

まずは40℃に向けて加熱をスタートします。ここから先は、Reproが自動的に作業をこなしていくので、当分の間、目を離しておいても大丈夫ですが、ここでは念のためひとつひとつ工程を説明していきます。

40℃に達すると7分間、外部センサーで実水温を、本体センサーで鍋底外側の温度を計測し、その温度差を計算していきます。

7分間の計測を終えると、次は70℃に向けて加熱を開始します。

70℃に達すると、同様に7分間計測を行ないます。

7分間の計測を終えると、最後の90℃に向けて加熱を開始します。

90℃も7分間の計測を行ないます。

40℃・70℃・90℃の各温度帯での計測が無事終わると、「キャリブレーション成功」の画面が表示されます。ここまでは放置しておいても大丈夫ですが、ここから「沸騰基準火力」の設定作業が「人力」で必要になります。
沸騰基準火力」とはReproの沸騰アクションを使う場合に「沸騰火力レベル=0.0」となる火力(ワット数)のことです。まずは「決定」ボタンをタップしてください。

沸騰設定温度」とは「97℃」のことです。このあたりの詳しいお話しは、
『Reproの「沸騰のお話し」基礎編』
をお読みください。
とにかくReproは97℃に向けて、自動加熱していきます。

97℃に達すると、上のような画面が表示されます。
沸騰基準火力については、以下のように規定されています。

「細かな泡が立っている微沸騰状態で、96℃以下にも下がらず、98℃以上にも上がらない、最小の火力(ワット数)」

ちょっと難しいかんじもしますが、つまりは「96℃から98℃の間をフラフラしている微沸騰状態で一番小さなワット数をアップダウンボタンで選択してください」ということです。
ちなみに火力調節単位が工場出荷状態のままなら、20W刻みで火力を細かく調整できます。

微沸騰って何よ?」ってかんじですが、画像で見るとこんな泡立ち具合です。ただし鍋の材質によっても泡の大きさは異なるので、あくまでも「参考画像」として見てください。

ここで大切なのは、
「しばらく待って様子を見ながらアップダウンボタンで火力を調節する」
ということです。
ワット数を変更して、実際の温度変化が起きてくるのにはタイムラグがありますし、温度は小さく上がったり下がったりを繰り返しています。急がないでゆっくりコントロール・ディスプレイの温度変化を見ながらアップダウンボタンを操作してください。ちなみに検証チームでは、おおよそ5〜10分ぐらいかけて、この作業をしています。

参考画像のような状態で96℃〜98℃の間になれば、「決定ボタン」をタップしてください。
その時のワット数が、ご使用になる鍋の「沸騰基準火力」として新たに生成されるプロファイルに記述されることになります。

沸騰基準火力を決定すると、新しい鍋プロファイルを作成するか否かの確認画面が表示されます。当然、「はい」をタップします。

このプロファイル名入力作業は、正直言ってめんどくさいです。
アップダウンボタン→文字選択
アップダウンボタン長押し→文字種選択(ひらがな→カタカナ→英大文字→英小文字→数字→記号)
1文字表示したらストップボタンで右へ1文字分移動(ここで「1文字確定」のつもりで決して決定ボタンを決して押さないこと。「決定」ボタンは名前が完成した時にタップします
右にカーソルが移動したら、また次の文字を選択…
を繰り返し、プロファイル名が完成したら最後に「決定」をタップします。当然ながら漢字変換機能はありません。

もし、水温ターゲットのプロファイル数がいっぱいになっていると、こんな画面が表示されることも。

この表示が出たら「はい」をタップしてください。現在のプロファイルのリストが表示されます。

上書きしてもよいプロファイルをアップダウンボタンで選択して、「決定ボタン」をタップします。

これで、キャリブレーション作業は完了です。

セッティングモード>鍋プロファイル管理>水温 を選択してプロファイル一覧を見ると、キャリブレーションで作成したプロファイル名(この例では「TEST」)が表示されています。あとは、他のプロファイルと同じように、スタートボタンをタップする時に、このプロファイルを選択すれば良いだけです。
最後にもう一度。キャリブレーションした鍋は「煮物」にしか使えません。炒めもの揚げ物にはご使用になれないのでご注意を。

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