ごぼうと言えば和食のレシピに頻ぱんに登場する、日本人にとってなじみ深い食材の一つです。いつでもスーパーや八百屋で見かける食材のひとつですが、ちゃんと旬があります。
では、旬のごぼうを見つけ出すためにはどうすればいいのでしょうか。本記事では、ごぼうの多様な品種と栄養価、そして日本各地の郷土料理まで、ごぼうについて幅広く深く探っています。
目次
ごぼうを食べるのは日本だけ?
ごぼうは日本の食文化に深く根付いている食材であり、多くの料理でその特性が活かされています。ここでは、ごぼうが日本国外でどのように評価されているのか、その歴史的背景や現在の状況について探っていきます。
長らく「ごぼうを食べるのは日本だけ」とされていましたが、近年ではその価値が国外でも見直されつつあります。では、日本以外でのごぼうの評価や用途はどうなっているのでしょうか。この疑問に答えるために、次のセクションで詳しく見ていきましょう。
ごぼうの基本情報
ごぼうは、その独特の風味と多様な用途で日本の食文化に深く根付いています。長らく、ごぼうを食べるのは日本だけとされていましたが、近年では台湾やヨーロッパでもその価値が認められつつあります。
ごぼうの香りやうま味は皮に多く含まれているため、皮を適度にこそげ落とす調理法が一般的です。泥や汚れはたわしなどでこすって洗います。
ごぼうの根は、切ってそのままにしておくと変色してしまいますが、かといって水にさらすとポリフェノール類が流出してしまいます。ポリフェノール類には抗酸化作用があり、肉や魚との相性も良いとされています。栄養素を重視するのであれば、アク抜きしない方がおすすめです。
日本国内での主要な産地は青森県、茨城県、北海道などで、特に10月から3月にかけての出荷が多いです。また、新しい品種として「滝野川ゴボウ」や「新ごぼう」、「葉ゴボウ」(若ゴボウ)などもあり、それぞれに特有の特性と用途があります。
日本で育てられているさまざまな品種
ごぼうの基本情報を把握したうえで、次に日本国内で栽培されている主要な品種とその特性について詳しく見ていきましょう。
滝野川ごぼう
滝野川ごぼうは現在最も一般的なごぼうの品種です。長さが1mにも及びますが、太さは3cm程度と比較的細いです。名前の由来は、江戸初期に東京都北区の滝野川付近で栽培が始まったことにちなんでいます。また、この品種を越冬栽培させて太くしたものが、京料理でよく使われる「堀川ごぼう」です。
大浦ごぼう
大浦ごぼうは日本一の太さを誇り、直径は10cm以上になり、長さも60cm~1m近くにもなります。中が空洞になる点が特徴で、肉質は柔らかく繊維が少ないです。ただし、生産されたものはほとんど成田山新勝寺の奉納品となっています。
葉ごぼう
この品種は、ごぼうの地上部の柔らかい葉柄と若い根が食用にされます。関西地方を中心に5~6月に出回り、代表的なものに「越前白茎白花」があります。
新ごぼう
この品種は、トンネルで霜を避けながら栽培され、12月から初夏にかけて出回ります。そのため夏ごぼうと言われることもあります。根の直径は1.5cm前後で、柔らかく香りも良いため、サラダやきんぴら、柳川鍋など多様な料理に使用されます。
サラダごぼう
最近ではごぼうを茹でた後、サラダとして楽しむ人も増えています。そのために開発されたのが「サラダごぼう」です。根が短く、色は白っぽく、肉質も柔らかで香りが良いです。
ごぼうの旬とは?
ごぼうは貯蔵しやすい野菜のため、通年で出荷されています。しかし、ごぼうにも旬があります。ここでは、ごぼうが最もおいしいとされる旬の時期に焦点を当て、その特徴や選び方、さらには地域や品種による違いまで詳しく解説します。
ごぼうの旬の時期
ごぼうは日本全国で栽培されていますが、その旬は地域や品種によって異なる場合があります。
一般的には、秋から冬にかけてが最もおいしいとされています。特に11月から2月頃がピークです。ただしこれは、最も流通している滝野川ごぼうなどの旬であり、品種によっては時期がずれます。
新ごぼうのように、成長しきる前に収穫するので時期がずれるものもあります。
質の良いごぼうの選び方
ここでは、質の良いごぼうを選ぶためのポイントを詳しく解説します。形状やサイズ、皮の状態など、見た目で判断する基準をしっかりと押さえておきましょう。
見た目で判断するポイント
ごぼうを選ぶ際、見た目は非常に重要な要素となります。まず、根元に「ヒゲ根」が少ないものを選ぶことがおすすめです。ヒゲ根が多いと、洗う際に手間がかかる上、繊維が硬くなることが多いです。
また、ごぼうの皮にひびやしわがないか確認することも大切です。ひびやしわがあると、保存状態が良くない可能性が高く、風味も落ちている場合があります。泥がついているものは風味が強く日持ちもするため、泥つきのものを選ぶと良いでしょう。
サイズについても注意が必要です。太すぎるごぼうは「す」が入っている(中身がスカスカな状態)恐れがあります。すが入っていると、繊維が硬く、食感が良くありません。そのため、太すぎないものを選ぶことが望ましいです。
旬のごぼうの保存方法
ごぼうは保存方法によっては、そのおいしさを損なってしまう可能性もあります。ここでは、旬のごぼうをいかにして長持ちさせ、おいしさを保つかについて詳しく解説します。
常温での保存
泥付きのごぼうであれば2週間ほど常温保存できます。新聞紙などに包んで冷暗所に保管しましょう。泥の付いていない洗ったごぼうであれば、冷蔵庫で保存するようにします。
冷蔵庫での保存
洗ったごぼうを冷蔵庫で保存する際には、いくつかのポイントに注意が必要です。まず、ごぼうは生の状態で冷蔵庫に入れる場合、新聞紙やキッチンペーパーでくるんで保存しましょう。これにより、乾燥を防ぎ、風味を保つことができます。
また、保存期間は短めに設定することがおすすめです。できれば1週間以内に使い切るのが理想です。
次に、ごぼうを切った後の保存についてですが、切り口が乾燥しないようにラップでしっかりと包んでください。そして、保存容器に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存するとよいでしょう。
冷凍保存のコツ
冷凍保存も一つの有効な方法ですが、その際にはいくつかのコツがあります。まず、ごぼうを冷凍する前には、必ず皮を剥いてから切ります。その後、食べやすい大きさに切ったごぼうを短時間水にさらしてから冷凍保存袋に入れてください。この水にさらす工程は、ごぼうの色を保つために重要です。
また、ごぼうを調理した後に冷凍する方法もあります。たとえば、きんぴらごぼうなどの調理済みの料理も、冷凍保存することができます。ただし、調理済みの場合は保存期間が短くなるため、早めに消費することが望ましいです。
ごぼうの栄養と健康効果
ここでは、ごぼうが持つ栄養成分とそれがもたらす多様な健康効果に焦点を当てます。食物繊維が豊富であることはよく知られていますが、その他にもカリウムやビタミンB群など、多くの栄養成分が含まれています。これらの成分にどのような健康効果があるのか、具体的な健康効果とともに詳しく解説します。
食物繊維の豊富さ
ごぼうは食物繊維が非常に豊富な食材です。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、特に可食部100g当たりに5.7gの食物繊維が含まれています。この食物繊維は、主に水溶性と不溶性の両方がバランスよく含まれており、それぞれが持つ健康効果は多岐にわたります。
水溶性食物繊維は、コレステロール値を下げる効果があり、また、血糖値の急激な上昇を抑制する働きもあります。一方で、不溶性食物繊維は、便通を良くする効果があり、便秘解消や大腸がんの予防にも寄与します。
食物繊維が豊富であるため、ごぼうはダイエット中の方にもおすすめです。食物繊維は満腹感を与え、小腹を満たすのに役立ちます。
その他の栄養成分
ごぼうには食物繊維以外にも、多くの栄養成分が含まれています。たとえばカリウムが320mg、カルシウムが46mg、マグネシウムが54mgと、ミネラルも豊富です。ミネラルは骨や歯の健康、神経伝達、筋肉の動きなど、体の多くの機能に関与しています。
また、ビタミンも含まれており、特にビタミンB群が豊富です。ビタミンB1、B2、B6は、エネルギー代謝や神経機能に必要な栄養素です。
さらに、妊娠初期の女性にとって非常に重要な栄養素の葉酸も68μg含まれています。
ごぼうを使った郷土料理
日本の各地にはごぼうを主役にした独自の郷土料理が存在します。今回は、滋賀県甲賀市の「くるみごぼう」と山口県萩市の「ごぼう巻き」について詳しく解説します。
くるみごぼう
「くるみごぼう」は滋賀県甲賀市信楽町に古くから伝わる郷土料理です。ごぼうと枝豆で作られたあんを和えたもので、非常に栄養価が高いのも特徴です。
くるみごぼうは信楽町上朝宮の三所神社で行われる秋祭りに供えられる風習があります。この祭りは「ごんぼ(牛蒡)祭り」とも呼ばれ、毎年秋に振る舞われています。この料理を食べると、1年間健康で過ごせるとも言われています。
くるみごぼうを作るには、まずごぼうの皮をこそげ取り、水にひたしてアクを抜いた後切ります。枝豆は茹でて薄皮を剥きます。その後、枝豆に砂糖と塩を加えてすり鉢で潰し、ごぼうと和えます。
ごぼう巻き
「ごぼう巻き」は山口県萩市の郷土料理として知られています。エソという細長い魚の皮とごぼうを組み合わせた、ユニークながらもおいしい料理です。エソは日本海で水揚げされ、その皮はかまぼこの製造過程で生じます。このエソの皮をごぼうに巻き付け、特製のタレに漬けて焼き上げるのが「ごぼう巻き」です。
山口県は瀬戸内海と日本海に面しており、海の幸を多く使用した料理が発展しています。特に萩地域では、かまぼこの歴史が古く、1640年には長州藩初代藩主・毛利秀就公を主客とする茶会で献上された記録があります。ごぼう巻きは、このかまぼこの製造過程で生じるエソの皮を活用した料理として生まれました。
主な使用食材はごぼうとエソです。エソは3枚におろし、身と皮に分けます。その皮を特製のタレに漬け込み、ごぼうに巻き付けて焼き上げます。タレは醤油、みりん、料理酒、砂糖を使って作られます。
ごぼう巻きは、お祭りや来客、花見のお弁当など、特別な機会に欠かせない料理です。近年ではスーパーや水産物販売所で手軽に購入できるため、家庭で日常的に楽しまれています。