しいたけの旬を知ってさらにおいしく 栄養と選び方のコツ

しいたけと言えば香りと風味が魅力。その食感が苦手でも、うま味に優れた食材として、出汁には使う方も多いのではないかと思います。
秋の味覚というイメージも強いですが、通年で手に入るきのこです。実際のところ、どの時期がしいたけの旬なのでしょうか?

本記事では、しいたけの旬の特性からその栄養価、さらには選び方と保存方法に至るまで、しいたけにまつわるあらゆる知識を総ざらいします。「春子」、「秋子」にも焦点を当て、それぞれの旬と栄養成分についても詳しく解説します。きのこ好きならば必読です。

しいたけの基本情報

しいたけは、日本の食文化において欠かせない存在です。ここでは、しいたけの基本的な情報について詳しく解説します。江戸時代から現代に至るまでの栽培の歴史、原木栽培と菌床栽培の違い、そして生しいたけと乾しいたけの特性と用途についてまとめました。

しいたけとは? 6,000種以上あるきのこのひとつ

しいたけは、日本と中国が原産地であり、特に日本には6,000種以上のきのこが存在するなかで、食用きのことして広く知られています。この多種多様なきのこの中で、しいたけはその代表格とも言える存在です。

歴史を振り返ると、江戸時代にはすでにしいたけが食用とされていました。当時は原木に自然発生するしいたけを採取していたとされ、伐採した原木に傷をつけて胞子を付着させるという手法が用いられていました。この方法が、後に「原木栽培」と呼ばれるようになります。
1942年には、農学博士の森喜作氏によって、人工的に菌を植え付ける技術が開発されました。

しかし、原木栽培には気象条件や原木の運搬が難点とされていました。そこで現在では「菌床栽培」が主流となっています。菌床栽培は、おがくずと米ぬかを混ぜ合わせて固めた培地に菌を植える方法で、この技術の普及によって、しいたけは一年中楽しむことができるようになりました。

原木栽培と菌床栽培

しいたけの主な栽培方法である「原木栽培」と「菌床栽培」。これらはそれぞれ異なる特性とメリットを持ち、しいたけの風味や食感、さらには価格にも影響を与えます。

原木栽培は、クヌギやコナラなどの広葉樹を伐り倒し、その枯れ木にしいたけの菌を植え付けて栽培する方法です。この方法は自然環境に近く、無農薬で木の養分を吸収しながら成長します。栽培期間は約2年と長く、そのために生産量は不安定ですが、食感が肉厚で香りも豊かとされます。

一方で、菌床栽培は木のおがくずと米や麦の糠を混ぜた人工的な栄養源にしいたけ菌を植え付け、湿度や温度を管理する施設で栽培します。この方法では約3~6カ月と短期間での栽培が可能で、大量生産が行えます。そのため、価格も比較的安価です。

原木栽培菌床栽培
培養環境自然に近い環境人工環境
培養媒体広葉樹の枯れ木おがくずブロック
栽培期間約2年約3~6カ月
流通主に乾しいたけ主に生しいたけ
価格比較的効果比較的安価
原木栽培と菌床栽培の特性

このように、原木栽培と菌床栽培は多くの面で異なります。

生しいたけと乾しいたけ

売られているしいたけは「生しいたけ」と「乾しいたけ」があります。それぞれの特性と用途について詳しく解説します。

生しいたけは、主にコナラ、シイ、クヌギなどの広葉樹の原木に自生するきのこです。現在市販されているものはほとんどが人工栽培されたものです。

生しいたけは食感がしっかりとしており、独特の風味があります。そのため、炒め物や煮物、スープなどによく使用されます。

乾しいたけはその名のとおり生しいたけを乾燥させたもので、うま味成分のグアニル酸が豊富に含まれています。特に日本の原木栽培種は品質が高く、海外でも評価が高いです。乾しいたけは、主に大分県、宮崎県、岩手県などで生産されています。

形状や収穫する時期によっては、「冬菇(どんこ)」や「香信」、「香菇(こうこ)」などと呼ばれる銘柄があります。

乾しいたけはそのままでは硬いため、水で戻して使用します。戻した水も出汁として非常に価値があり、煮物や汁物に使われます。また、炒め物やちらし寿司など、多岐にわたる料理に利用されます。

しいたけの旬の時期

しいたけは一年中楽しむことができる食材ですが、露地栽培における旬を迎える時期にはその魅力が最高潮に達します。ここでは、春と秋それぞれの旬に出回るしいたけ、すなわち「春子」と「秋子」の特性とその使い方について詳しく解説します。

春子と秋子の特徴

冬にじっくり育てられ春に出回るしいたけは「春子」と呼ばれ、特に肉厚で味が良いとされています。春子は年間収穫量の約7割を占めるほど多く出回ります。

風味がしっかりと感じられます。肉厚で身がしまっており、味が良いとされています。

一方で、夏から育てられ秋に出回るしいたけは「秋子」と呼ばれます。秋子は香りが特に豊かなのが特徴です。そのため鍋物用として多く出回ります。

しいたけの栄養価

ここでは日本食品標準成分表をもとに、生しいたけと乾しいたけのアミノ酸成分を詳細に比較します。

栄養成分の紹介

しいたけには多くの栄養成分が含まれていますが、特に注目すべきはアミノ酸の豊富さです。日本食品標準成分表に基づいて、生のしいたけと乾しいたけのアミノ酸成分を比較してみましょう。

可食部100g当たりのアミノ酸成分生しいたけ乾しいたけ
グルタミン酸450mg3,600mg
アスパラギン酸210mg1,700mg
アラニン170mg980mg
アルギニン140mg860mg
ロイシン160mg1,100mg
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数値をもとに作成

乾しいたけは、生しいたけに比べてアミノ酸成分が格段に多いことがわかります。特にグルタミン酸の量が顕著で、乾しいたけは生しいたけの約8倍ものグルタミン酸を含んでいます。グルタミン酸はうま味成分として知られ、料理の風味を高める要素となります。

アミノ酸以外にも食物繊維やビタミンB群、葉酸などが豊富に含まれています。

乾しいたけ100gあたりには食物繊維総量が46.7gも含まれています。生しいたけでも4.9g含まれており、他のきのこ類と比べても高い数値です。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、乾しいたけには特に不溶性食物繊維が44.0gと非常に多く含まれています。不溶性食物繊維は腸内の消化活動を助け、便通を良くする効果があります。また、食物繊維全体としては、血糖値の急激な上昇を抑える効果や、コレステロールの吸収を減らすことで心臓病のリスクを下げる効果も期待できます。

ビタミンB1は0.48mg、ビタミンB2は1.74mg含まれています。特にビタミンB2は、皮膚や粘膜の健康維持に寄与し、ビタミンB6は免疫機能の正常化やアミノ酸の代謝に関与しています。

葉酸は細胞の成長とDNAの合成に不可欠な栄養素であり、特に妊娠を計画している女性にとっては重要なビタミンです。乾しいたけには葉酸が270μg含まれており、健康な細胞の維持に役立ちます。

なお、今回は乾しいたけとの比較対象として菌床栽培での生しいたけを選びましたが、原木栽培と菌床栽培では栄養素に顕著な違いはありません。

しいたけ特有の成分「エリタデニン」

エリタデニンはしいたけに特に多く含まれる成分です。
研究によると、エリタデニンの量は一般的にはしいたけ100gあたり約50.7mgから92.7mgのエリタデニンを含まれています(青柳康夫、正田悦子、菅原龍幸.栄養と食糧. 干しシイタケ各種銘柄のエリタデニン含量について. 1976)。

健康効果としては、主にコレステロールを下げる作用があるとされています。体内でのコレステロールの合成を抑制することにより、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の減少を助けると言われています。そのため、心臓病や動脈硬化などの心血管系疾患のリスクを低減する効果が期待できるでしょう。

しいたけの選び方と保存方法

しいたけの選び方と保存方法にはいくつかのコツがあります。ここでは、見た目での選び方から、最適な保存方法まで、しいたけをより長く、よりおいしく楽しむためのヒントを詳しく解説します。

見た目で選ぶ際のポイント

生しいたけを選ぶうえでまず最初に注目するのは、傘につやがあるかどうかです。つやがあるということは、そのしいたけが新鮮である証拠です。濡れたようなつやがあり、なめらかでしっとりとした表面のものは、質が高いと言えます。

次に、傘が肉厚で巻き込みが強いものを選びましょう。これは食感が良く、風味が豊かなしいたけであることを示しています。分厚い傘は食べ応えがあり、火を通した後もその食感が持続します。

軸は太くて短いほうが栄養をしっかりと吸収できている証拠です。このようなしいたけは、深みのある風味が楽しめます。

しいたけの最適な保存方法

生しいたけを長持ちさせるための保存方法はいくつかありますが、その中でも特に効果的な方法をご紹介します。

冷蔵保存

しいたけを冷蔵保存する場合は、ポリ袋やラップで包んで入れるのが一般的です。水分に弱い性質のため、キッチンペーパーや新聞紙にくるんで、余分な水分を吸収してあげるようにしてから包むとされに良いでしょう。この方法であれば、約1週間程度は新鮮な状態を保つことができます。

冷凍保存

1カ月ほど保存したい場合は、冷凍が最も効果的です。冷凍されて硬くなった軸は切りにくいので、あらかじめ傘と軸を切り分けてから冷凍すると便利です。冷凍することで細胞膜が壊れ、うまみ成分が出やすくなる効果もあります。

電気刺激で増える? しいたけの不思議

しいたけは刺激を与えると収穫量が増えるとされており、実際に原木をハンマーなどで叩いて刺激を与える栽培法が存在します。
また、古くから「雷が鳴るときのこがよく生える」と言われています。その伝承は事実なのか、実際に調べている研究もあります。九州大学などの研究では、しいたけのほだ木(しいたけの種菌をつける原木)に対して電気インパルス印加装置を使って刺激を与えたところ、発生数が増加したとしています。特に、「3年ほだ木に50kV印加した場合が最も高い効果が得られた」そうです。

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