欧風ビーフカレーとパウダースパイスとテンパリング

お手軽欧風ビーフカレーを作ってみた

Repro開発チームとして「お手軽欧風ビーフカレー」というレシピを追加しました。

欧風ビーフカレーを作った理由

どうして「欧風ビーフカレー」なのかと言えば、
(1)以前の「牛ランプ肉実験」で、4cm角立方体の肉をカットして2ヶ月に渡り実験してしまったので、カットした残りの肉が冷凍庫に真空パックされて大量に備蓄されていたこと。
詳しくはこちら↓



(2)Repro開発チームとして「おうちカレー」のレシピが今までなかったので、Reproでカレーを作る際のちょっとしたTipsをお伝えしたかったこと。

欧風ビーフカレーと言えば、神田のボンディさんとか、新宿中村屋さんとか、横浜のホテルニューグランドとか、そうそうたる名店・老舗がめちゃくちゃ手間ひまかけて作っています。
そんな激戦区に手を出すのもかなり勇気がある行為なのですが、なにせ大量在庫の素材が「牛肉」だったので、
「牛肉ならやっぱり欧風ビーフカレーかな…」
という安直なイメージで挑みました。

スパイス・カレーの専門家やマニアの方へ

ちなみに先に言っておきますが、スパイスやカレーの専門家やマニアの方からの「お前そこは間違っているだろう!」というツッコミは勘弁してください。
今回は、スパイスの理屈も分かっていない素人が「欧風ビーフカレー」を作ったらどうなるのか?が記事の主題ですから。

Reproで欧風カレーを作る場合の条件

素人でも知っているカレーの掟

まずはレシピを作る前に、よくネットでも書かれていて、さすがに素人でも知っているカレーの掟を書き出してみました。

(1)パウダースパイスはすでに香りが立っているのでそのまま使えるけれど、ホールスパイスはテンパリング(油で炒める)が必要。

(2)調理工程の最初の方でスパイス類を入れてしまうと香りが飛んでしまうので、スパイス類を入れるのは工程の最後の方に。(にんにくなども風味を出したいなら最後の方に投入する)

Reproで作る場合ならではの条件

こっちは単純明快です。

(3)正確な温度管理をさせるためには液体の粘性が低いほうが好ましいから、最後の最後にとろみを付けたほうが良い。

できる限りお手軽に作りたい

そもそも「欧風カレー」というものは、フランス料理がベースになっているので、本気でやったら調理工程がめちゃくちゃ大変です。
フォン・ド・ヴォーが必須だからとおうちで子牛の骨やスネ肉を一晩オーブンにかけたり、デミグラスソースを一から作るのは、さすがに勘弁です。
きっと香味野菜を一生懸命切って、フランス語で言えば「ミルポワ」、イタリア語で言えば「ソフリット」からスタートすることになるでしょう。
元の素材が牛ランプ肉なので、柔らかくするためにそれだけでReproで2時間ぐらい煮込み続ける必要があります。
ということで、今回は上記の(1)、(2)、(3)の条件をまずは検証することに専念して、他の要素はできるだけ「出来合いの製品」を流用することにしました。

「手抜き」=お手軽にするための材料と手法

それでもフォン・ド・ヴォーは使いたかったので、Amazonで、これを買いました。

KWBフーズの無添加 フォンドボーブック型 (フォンドボーブック型)500

冷凍のフォン・ド・ヴォー500gです。

ミルポワ・ソフリット・自分であめ玉作りも省エネしたかったので、こちらもAmazonで。

エスビー食品 万能菜 北海道産炒め玉ねぎ 180g 

本当は「炒め玉ねぎ」はReproが一番得意とする料理の一つかも知れませんが、今回は出来合いの製品で。また別の機会に「究極のあめ玉」のレシピを作りたいと思います。

そして、カレー粉はもちろんスパイス類もすべてパウダーを使います。

ハインツシェフソシエデミグラスソース

もちろんデミグラスソースを一から作る気は毛頭ありません。お馴染みハインツのデミ缶です。ただこの「シェフソシエ」シリーズのデミ缶は、いわゆる「デミ缶臭さ」がないので匂いを飛ばす必要がありません。普通のデミ缶よりちょっとお高めですが、お勧めです。

そして極めつけは「ブールマニエ」です。本来ならカレールーを作るべきところでしょうが、時短とともに、さっきの条件(3)「できるだけ粘性が低い方がReproで温度管理しやすい」を追求するために、あえてとろみは調理工程の最後にブールマニエすることで付けることにしました。

実験の結果

大まかなレシピの手順

前述の(1)〜(3)の条件を満たすように考えたレシピの概要は以下のとおりです。

(1)フライパンで牛肉を炒め、焼色が付いたら、すりおろしたにんにく1片、炒め玉ねぎ180gとバター20gを入れて軽く炒める。

(2)さらに赤ワイン100mlを加えて、アルコール分を蒸発させる。
(3)フライパンの中身を鍋に移し、水100mlも加えてReproで98℃で加熱すること2時間。肉を柔らかくします。

(4)2時間経過したら、カレー粉、かくし味のインスタントコーヒー粉と八丁味噌を加えてよくかき混ぜてから、さらにデミグラスソースを投入します。

(5)デミグラスソースを加えると、粘性が若干高くなるので、外部センサーの先端が鍋底に接触するようにセットし直して、15分間の加熱をスタート。このあたりの温度管理についてのTipsについては、こちらに詳しく説明しています。


(6)15分加熱したら、ブールマニエして、とろみが付く前に、スパイス類を投入し、よく混ぜます。


(7)最後に95℃で加熱しながらブールマニエ(小麦粉20g・バター20g)で適度なとろみをつけて完成。

実験1

結果は端的に言って「失敗」です。
スパイスの香りもさることながら、一生懸命混ぜてもパウダースパイスの粉っぽさがめちゃくちゃ残ります。一晩冷蔵庫で寝かせると少しだけ粉っぽさが紛れるものの、やっぱり粉っぽさを感じてしまいます。つまり、

(1)パウダースパイスはすでに香りが立っているのでそのまま使えるけれど、ホールスパイスはテンパリング(油で炒める)が必要。

はどうも間違いなのでは? パウダースパイスもテンパリングが必要です。

実験2

ということで、別のReproでスパイス類をテンパリングすることにしました。小さめのフライパンに油をひいてテンパリングします。
パウダースパイスは焦げやすいので、140℃で1分間ほどテンパリングしてみました。

2回目は、テンパリングしたスパイスをブールマニエする直前に加えてかき混ぜました。
すると1回目より香りも立ち、粉っぽさもグッと減りました。
でもまだどこかに「粉っぽさ」を感じてしまいます。

結論から言うと「コリアンダーシード」のパウダーはテンパリングして最後に加えてもかなりの「粉的な存在感」が残っていると言う事実。
スパイスの種類によって、粉っぽさに違いがあるなんて…
やっぱりスパイスの世界は奥が深いです。これだけスパイスにこだわるお店や人がいるのもうなずけます。
そこで…

実験3

コリアンダーシードだけは、最初に油で炒めて、そのまま肉を炒めて混ぜ合わせることにしました。つまりコリアンダーシードはカレーのベーススパイスにするということ。(その分香りは減ってしまいますが)

コリアンダーシードを調理工程の最初期に加えて、後は基本的に実験1と同じ工程を。
そしてブールマニエする直前にテンパリングした残りのスパイスを、鍋にジュッと加えます。

この後はよくかき混ぜて、ブールマニエしながら軽く加熱します。
こうすると香りも立ちますし、粉っぽさもまったく感じません。
「すごい発見!」と思いきや、スパイス系なカレー屋さんにとっては、これって当たり前のやり方だったことを後から知りました。(無知ですみません)

一晩寝かせたら、それっぽい=それなりに美味しいカレーができました。ちなみに横着した「ブールマニエ方式」は、小麦粉の粉っぽさをあまり感じません。最後にとろみを調節できることを考えると、ルーを作るのとどっちが良いのでしょうか…

【結 論】

(1)パウダースパイスも低温(140℃ぐらい)でテンパリングして、最終工程に加えるべき。

(2)スパイスの種類によって粉っぽさに違いがあるので、どのスパイスを調理工程の初期に加え、どのスパイスを最終工程での香り付けに使うのかをきちんと考える必要がある。

これが今回の実験の結論でした。
しかしながら、どんなスパイスがどんな香りで、どんな使われ方をするのか?ましてやホールスパイスを使ったらその組み合わせは無限のようにあるわけで、なかなかに素人がスパイスの奥義を知るためには、インドに修行に行くしかないのかも…(苦笑)

ということで、今回のレシピの味の方は、スパイス・カレー通の方に適当にアレンジしていただいて、ReproのTipsを覚えて、時短と温度管理に役立てていただければと思います。


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