とうもろこしの旬っていつ?おいしい時期と選び方のポイント

とうもろこしは、夏の訪れを感じさせる代表的な野菜のひとつです。とうもろこし特有の甘みとシャキシャキとした食感は、数ある野菜のなかでも唯一無二の存在。そのまま食べてもおいしく、さまざまな料理にも活用できるとうもろこしの旬を毎年楽しみにしている方も多いはず。
シーズンには北海道から九州まで、それぞれの特色を持つとうもろこしが旬を迎えます。地域ごとに異なる収穫時期や、新鮮でおいしいとうもろこしの見分け方を知って、よりおいしく楽しむためのポイントをおさえておきましょう。

とうもろこしはどんな野菜なのかおさらい

とうもろこしは穀物のひとつです。イネ科に属し、米や小麦と同様に広く栽培されています。ここではまず、とうもろこしの植物学的特徴や種類、栽培方法について詳しく解説するほか、普段私たちが食べている「スイートコーン」をはじめとする主要な品種についても紹介します。

とうもろこしはイネ科の穀物

とうもろこし(学名: Zea mays)は、米や小麦などの重要な穀物と同じイネ科(Poaceae)に属しており、世界中で広く栽培されています。
とうもろこしは一年草で、その成長過程は種子から始まって成熟した植物になるまで約3~4カ月を要します。とうもろこしの茎は太くて節があり、葉は長くて幅広いのが特徴です。高さは一般的に2~3メートルに達し、一部の品種ではそれ以上の高さになることもあります。

花は雌花と雄花に分かれ、雌花は穂(スイートコーンの場合は食用となる部分)を形成し、雄花は頂部に穂状に集まります。穂には多くの粒が並び、その粒が成熟することで収穫できるようになります。

ひげの数は粒の数!?

実は、皮付きのとうもろこしを買ったときによく見るひげの本数は、実(粒)の数と同じです。 つまり、ひげが多いほど実がぎっしり詰まっていることを示しています。 そして後述しますが、おいしいとうもろこしほど、ひげが茶色または黒いのです。

普段食べているのは主にスイートコーン

Reproキッチンスタッフが食べ比べてみた3種類のとうもろこし。

とうもろこしにはさまざまな種類がありますが、まずは私たちが普段主に食べているスイートコーンから詳しく説明します。

スイートコーンは、糖分が豊富で甘みが強いとうもろこしです。野菜としてだけでなく、缶詰や冷凍食品に加工された状態でも多く流通しています。粒の色は黄色のみや白のみ、バイカラー(黄色と白の混合)などがあります。品種改良が進んでいて、それぞれたくさんの品種が展開されています。
スイートコーンはもともとデンプン含有量が少ないですが、収穫後には糖分がデンプンに変わりやすいという特徴があるので、できるだけ新鮮なうちに食べることをおすすめします。

スイートコーンは粒の色で大きく3種に分かれる

私たちの食生活において最もなじみ深いスイートコーンは、粒の色によって大きく3種類に分けられます。それぞれの特徴と代表的な品種について詳しく見ていきましょう。

イエロー種

イエロー種のスイートコーンは、一般的に最も広く栽培されている種類です。とうもろこしと言われてほとんどの方が真っ先に思い浮かぶのが、おそらくイエロー種ではないでしょうか。粒が黄色で、見た目にも鮮やかで食欲をそそります。代表的な品種として「ゴールドラッシュ」が挙げられます。これは国内最大手の種苗メーカー「サカタのタネ」が開発した品種で、高糖度と柔らかい食感が特徴です。甘みが強く、果汁がたっぷりと含まれていて、生で食べることが可能です。また、発芽と低温下での初期成長についても安定しているため、家庭菜園でも育てやすい品種として人気があります。

ゴールドラッシュ

また、イエロー種のなかでほかに有名な品種といえば「嶽きみ(だけきみ)」でしょう。青森県の最高峰・津軽富士とも呼ばれる岩木山のふもと、嶽地区で栽培・収穫されたとうもろこしが「嶽きみ」です。「きみ」は津軽弁で「とうもろこし」を指します。
嶽きみは、8月のお盆あたりから10月上旬ごろにかけて収穫されます。鮮度が落ちるスピードが速いので、日の出前の涼しい時間に収穫するのが特徴といえます。旬になると、新鮮な嶽きみを求めて直売所に列ができたり、嶽きみの露店がずらっと並ぶのが壮観です。
筆者も昔、東北旅行をしたときに道の駅で嶽きみを食べたことがありますが、普通のとうもろこしとはまた違う甘みを感じた記憶があります。

シルバー種

シルバー種は、粒が白いとうもろこしで、その見た目からホワイトコーンとも呼ばれます。有名なのは「ピュアホワイト」という品種ですが、主に北海道でしか栽培しておらず、気温が高くなる本州で栽培するのは難しいという難題がありました。 そこで品種改良を重ねた結果、「ホワイトショコラ」という、ピュアホワイトを超える糖度・大きさ・粒のやわらかさが特徴のとうもろこしが誕生したのです。
今回はそのホワイトショコラを入手しました。写真のとおりイエロー種やバイカラー種とは異なって、粒は小さく表面にツヤがあります。糖度も高く、完熟メロンと同じくらいの糖度18〜19度ほどにまで達します。皮が薄いことから柔らかくて食べやすく、フルーツのようなジューシーさが楽しめます。 新鮮なものは生で食べられますが、鮮度が落ちると甘みも減ってしまうので注意しましょう。

ホワイトショコラ

バイカラー種

バイカラー種は、黄色と白の粒が混ざっているトウモロコシです。ここでは近年ようやく認知度が上がってきた「ドルチェドリーム」を紹介します。ドルチェドリームは2017年から栽培されている新品種で、最高糖度は18〜20度に達するほどに甘く、果汁がたっぷりと含まれています。大きな粒は柔らかく食べ応えがあり、生で食べるとジューシーな味わいを楽しむことができます。「飲むトウモロコシ」と呼ばれているのも納得できます。山梨県甲府市が市のブランド認定もしている品種です。

ドルチェドリーム

とうもろこしの旬はいつ?

とうもろこしの旬は、日本全国で異なる時期に訪れますが、一般的には6月から9月までが最もおいしい時期です。ここでは、全国出荷量の約半分を占める北海道のとうもろこしの旬について詳しく解説します。

北海道のとうもろこしの旬

北海道は日本全国で最もとうもろこしの生産量が多く、令和4年産野菜生産出荷統計によると、 1年に76,300トンのスイートコーンを出荷しています。この量は全国の約半分を占めています。
北海道のとうもろこしの旬は8月から9月にかけてです。温暖な地域に比べて春の訪れが遅く、それにあわせて種まきも収穫も遅れていきます。
収穫期の北海道は昼夜の気温差が大きいため、糖度が高く、実がしっかりと詰まったとうもろこしが育ちます。
露地栽培が一般的ですが、早い時期に収穫を目指すハウス栽培も行われています。ハウス栽培により、7月から新鮮なとうもろこしが楽しめる地域もあります。

おいしいとうもろこしの選び方

おいしいとうもろこしを選ぶために、いくつかのポイントをおさえておきましょう。特に、ひげや皮の状態をチェックすることで、鮮度の良し悪しを見分けることができます。ここでは、ひげの色や量、皮の色と状態、さらには香りや重さといった具体的なポイントを解説していきます。これらの知識を活用すれば、スーパーや市場で新鮮で甘いとうもろこしを見つけることができるでしょう。

ひげや皮で判断する方法

1. ひげの色と量

とうもろこしのひげは、穂の部分から長く伸びる細い毛のような部分です。新鮮なとうもろこしのひげは濃い茶色をしており、量も多いのが特徴です。薄い色や緑色のひげは、収穫から時間が経っている証拠ですので避けましょう。最初のほうでも言及したように、ひげの量が多いほど、とうもろこしの粒がしっかりと発育しています。

2. 皮の色と状態

皮の色は鮮やかな緑色をしており、しっかりとした質感があるものを選びましょう。黄色みを帯びていたり、乾燥している皮は鮮度が落ちている証拠です。さらに、皮がしっかりと実を包み込んでいる状態であることも重要です。

3. 香り

新鮮なとうもろこしは、甘い香りが強く感じられます。皮付きの状態でも甘い香りがしっかりと感じられるものを選びましょう。香りが弱いものや、酸味のある匂いがするものは鮮度が落ちている可能性があります。

4. 重さ

新鮮なとうもろこしは水分を多く含んでいるため、手に持った時にずっしりと重みを感じます。軽いものは水分が抜けている可能性が高いので、避けた方が良いでしょう。

これらのポイントを踏まえて、スーパーや市場でとうもろこしを選ぶ際には、ひげや皮の状態をしっかりとチェックしてみてください。

とうもろこしの栄養素

とうもろこしは、私たちの健康をサポートするための豊富な栄養素を含んでいる魅力的な野菜です。ここでは、特に注目すべき栄養素として、不溶性食物繊維のセルロースと、必須脂肪酸であるリノール酸について詳しく解説します。これらの栄養素がどのように私たちの体に良い影響を与えるのか、また、その他のビタミンやミネラルについても触れながら、とうもろこしの持つ健康効果を紹介します。

セルロースが豊富

とうもろこしは栄養豊富な野菜であり、特に不溶性食物繊維であるセルロースが豊富に含まれています。「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によれば、スイートコーン100グラムあたり約3.0グラムの食物繊維が含まれています。その多くがセルロースです。
セルロースは腸内を掃除する役割を果たし、便秘解消に効果的とされています。また、腸内細菌のバランスを整えることで、免疫力の向上や代謝の促進にも寄与します。食物繊維は水分を吸収して膨らむため、食事の満足感を高めることができます。これにより、過食を防ぎ、健康的な体重維持にも役立ちます。

リノール酸の役割

リノール酸はオメガ6系脂肪酸の一種で、体内で合成できないため食事から摂取する必要があります。リノール酸は細胞膜の構成成分であり、細胞の機能維持に不可欠です。また、血液中のコレステロール値を低下させ、動脈硬化の予防に寄与します。とうもろこしにはリノール酸が多く含まれており、心臓病や高血圧の予防に効果があります。

とうもろこしの他の栄養素

とうもろこしにはビタミンやミネラルも豊富に含まれています。例えば、ビタミンB群やビタミンC、カリウム、マグネシウムなどが含まれており、これらはエネルギー代謝をサポートし、体の調子を整えるために重要な役割を果たします。特にビタミンB1は糖質の代謝を助け、疲労回復に効果的です。

とうもろこしの保存方法

常温、冷蔵、冷凍、それぞれの方法でとうもろこしを保存するには、おいしさを保つためのポイントがあります。各方法の詳細な手順とコツについて学び、とうもろこしをおいしく保ちましょう。

常温保存のポイント

とうもろこしは非常にデリケートな野菜であるため、保存期間が短いことを念頭に置いてください。特に夏場の暑い時期には、とうもろこしの鮮度がすぐに低下してしまうため、可能な限り早めに食べることをおすすめします。
常温保存では、基本的に1日以内を目安にしましょう。基本的には低温での保存を推奨しますが、冷蔵庫に入らない場合などは以下の手順で保存すると良いでしょう。
まず、とうもろこしのひげを取らずに皮つきのまま保存することが基本です。皮がついていることで水分が保たれ、乾燥を防ぐことができます。
次に、1本ずつ新聞紙かキッチンペーパーで包みます。この際、ポリ袋に入れてから保存することで乾燥をさらに防ぎます。保存する場所はできるだけ涼しいところを選び、直射日光を避けるようにしましょう。
保存の際にひげ側を上に向けて立てて保存するのもポイントです。もし可能であれば、保冷剤を入れた発泡スチロールやクーラーボックスを活用すると、さらに鮮度を保ちやすくなります。皮なしのとうもろこしは常温保存には適さないため、すぐに調理するか冷蔵保存するようにしましょう。
せっかくなので、Reproで作れるおすすめのとうもろこしレシピをご紹介します。

冷蔵保存のコツ

とうもろこしを冷蔵保存する際には、皮付きのままで保存することが基本です。皮をついたままにすることで乾燥を防げます。皮をむくのは汚れている外側のみにしましょう。
次に、皮付きのとうもろこしをキッチンペーパーや新聞紙で包みます。紙類で包むことで、余分な湿気を吸収してくれます。冷蔵庫に入れる際には立てて保存しましょう。
保存期間の目安は2〜3日です。長期間保存すると鮮度が落ち、甘みが失われるため、なるべく早めに食べることをおすすめします。
また、茹でたとうもろこしも冷蔵保存が可能です。茹でた直後にラップで包み、粗熱を取ってから冷蔵庫に入れます。この方法で保存すると、3〜4日間おいしく食べることができます。

冷凍保存の手順

とうもろこしを冷凍保存する際には、汚れている外側の皮をむきます。ひげの先も丁寧に取り除きましょう。
次に、ひとつずつラップでしっかりと包みます。ラップで包むことで、冷凍庫内での乾燥を防ぎ、風味を保つことができます。ラップで包んだら、保存袋に入れて冷凍庫に入れましょう。保存袋に入れる際には、できるだけ空気を抜いて密封することがポイントです。空気が残っていると、冷凍焼けの原因となり、品質が低下します。保存期間の目安は約2カ月です。

茹でたとうもろこしを冷凍保存する場合は、茹で上がったらすぐにラップで包み、粗熱を取ります。こうすることでシャキシャキとした食感を保ったまま保存できます。
冷凍保存する前に輪切りにしたり、芯から実を外しておくと、解凍しやすく冷凍庫の場所を取りません。
茹ででから冷凍保存したとうもろこしは、約1カ月間保存が可能です。

冷凍した生のとうもろこしを食べるときは、必ず加熱してから食べましょう。一番手軽な解凍方法は電子レンジです。レンジに入れる前に、ラップを緩めに巻き直してから加熱してください。もちろん茹でたり蒸したりしても問題ありません。
茹でてから冷凍したとうもろこしは、冷蔵室に移して自然解凍させるのがおすすめです。

スイートコーン以外のとうもろこし

最後に、食用として主に流通しているスイートコーン以外のさまざまなコーンを見てみましょう。世界では、知らないあいだに知らないところでとうもろこしが活用されていることがわかります。

デントコーン(Dent Corn)

デントコーンは、食用というよりも家畜の飼料や工業用としてアメリカを中心に栽培されているとうもろこしです。粒の中央にくぼみがあるので「デント(凹み)」と名付けられました。また、このくぼみは馬の歯に似ていることから「馬歯種(ばししゅ)コーン」とも呼ばれています。
デントコーンはデンプン含量が高いので、ここからコーンスターチがつくられるほか、グルコース(ブドウ糖)の製造にも使用されます。糖を発酵させることによってバイオエタノール(つまりはエチルアルコール)が生産できるので、米国では近年、とうもろこし全体の約4割がエタノール製造に用いられているといいます。こうしたバイオエタノールは主にガソリンに混ぜて自動車の燃料に使われており、CO2排出量を削減するエコ燃料として期待されています。エチルアルコールはお酒に入っているアルコールでもあり、バーボンの原料もこのデントコーンです。

馬の歯ってこーんなにコーン似だったんですね…。

ポップコーン(Popcorn)

とうもろこしには、映画のお供としておなじみの「ポップコーン」になる品種とならない品種があります。ポップコーンづくりに使われるとうもろこしは、「爆裂種」と呼ばれており、粒が小さく、外皮は硬いという特徴があります。加熱すると、内側にある軟らかくて水分をふくんでいる部分が蒸発していくのですが、この硬い外皮に阻まれて、圧力に耐えきれず破裂してポップコーンになるというわけです。

フリントコーン(Flint Corn)

フリントコーンは「硬粒種コーン」とも呼ばれる、硬い外皮を持つとうもろこしです。カラフルな粒の色が特徴的で、主に装飾用や穀粉として利用されており、インディアンコーンとも呼ばれます。日本でもすっかりおなじみのメキシコ料理「トルティーヤ」に使われているのは、このフリントコーンです。

カラフルで装飾にぴったりなとうもろこしです。

ワキシーコーン(Waxy Corn)

ワキシーコーンは、デンプンの一種であるアミロペクチンがとても多く含まれており、糊状の性質を持つとうもろこしで「糯(もち)種」とも呼ばれています。 発祥の地・中国南部から20世紀に米国に渡って改良され、現在はアジアでの利用が多くみられます。工業用途では接着剤や光沢紙の原料として活用されており、食品用としては糊状の性質を活かして特に中華料理などでとろみをつけるために重宝されています。

これがワキシーコーン。表面はワックスがけをしたようなツヤがあります。

さて、この記事を読んで、とうもろこしについての知識を深めることができたでしょうか?
今夏(2024年8月末)には勢力の強い台風が日本列島をゆっくりと縦断し、各地の農作物に影響をもたらしましたが、真夏日と雨の日が繰り返されたことによって、9月に入っても糖度が高いとうもろこしを収穫できる地域があるといいます。
ぜひこの記事を参考にして、新鮮でおいしいとうもろこしを見つけてください。

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