バージョンアップしたフェイルオーバー機能

外部センサーから本体センサーへ自動切り替わり

フェイルオーバー機能概念図

Reproは水温ターゲット(煮物)、油温ターゲット(揚げ物)をする時に外部センサーを使います。
常温から設定温度に加熱している時に、外部センサーに何らかの異常があったとReproが判断した場合(=本体センサーは最大火力で加熱しているのに、外部センサーで測った温度が、ある一定のしきい値以上上がらない)には、自動的に温度コントロール(測温も含む)を外部センサーから本体センサーへ移行する、言わば「安全装置」のようなものが「フェイルオーバー機能」です。
いくら加熱しても外部センサーで測った水温や油温が上がらないとすると、最初に疑われるのは「外部センサーの故障」です。フェイルオーバー機能はこうした不測の事態に備える機能なわけですが、発動する条件は「ある一定時間内に、ある一定温度以上上がらない場合」です。
そして外部センサーの故障以外にも、この発動条件を満たしてしまう場合があります。例えば、
(1)鍋プロファイルが存在しないような大容量の寸胴鍋などでReproの火力では温めきれないぐらい大量のスープを作ろうとした。


(2)冷蔵庫に鍋ごと一晩入れて固まったカレーに無理やり外部センサーを挿して温めた。

(3)大量の氷が入った氷水を温めようとした。

などなど…
決してお勧めはしませんが、ただ便利に調理しようとすると(1)〜(3)のような作業を意図的にされるユーザーの方もいるかと。特に(2)などは、一般のご家庭でもやりがちですよね。
そして、こうした「確信犯?」のユーザーにとっては、作業途中で外部センサーから本体センサーへフェイルオーバーする機能はじゃまなだけです。そこでReproのセッティングモードには、このフェイルオーバー機能をON/OFFする設定があります。詳しい内容はこちらのコラム記事をごらんください。

保温フェーズでのフェイルオーバー機能が復活しました

初期加熱フェーズと保温フェーズ

 さて、これまでお話ししてきた「フェイルオーバー機能」は、いわゆる「初期加熱フェーズ」と言われるフェーズでのみしか機能しませんでした。
初期加熱フェーズとは、例えば常温の水を98℃に加熱しようという時に98℃(=設定温度)に達するまでの加熱フェーズです。これに対し98℃(=設定温度)に水温が達し、この後は98℃をキープしようというフェーズを「保温フェーズ」と呼びます。
そして今回のプログラム・アップデート(20250115-1637)では、この「保温フェーズ」でもフェイルオーバー機能が作動するように改良されました。
いや正確に言うと、遥か以前のファームウェアでは保温フェーズでのフェイルオーバー機能が存在したのですが、誤検知する場合があったので、ある時期から初期加熱フェーズでのみフェイルオーバー機能が作動するように仕様変更していたのです。
でも現在は、プログラム・アップデート(20231212-1209)で「フェイルオーバーON/OFF機能」が付加されました。確信犯的?に誤検知するような調理方法をする場合には、事前にフェイルオーバー機能をOFFにしておけばよくなったので、復活したというわけです。

保温フェーズでのフェイルオーバー機能はどんな時に便利?

さて、この復活した保温フェーズでのフェイルオーバー機能はどんな時に使えるのでしょう?

(1)外部センサーが故障した時

当たり前ですが元々が安全装置ですから(1)は当然ですね。
そしてもう一つがこれです。


(2)煮込み過ぎて、外部センサーが煮汁から露出してしまう。
そしてさらに、ありがちなのが…

外部センサーで温度管理しておでんなどの鍋を囲む

Reproで80℃前後に温度をキープして、楽しくおでんなどの鍋ものを囲んでいる時に、美味しくて、ついつゆを具と一緒に飲んでしまい、いつの間にか外部センサーの先端が露出してしまうということも。フェイルオーバー機能が作動していないと、突然ぐつぐつ沸騰が始まってしまいます。

保温フェーズでのフェイルオーバー機能の仕組み

 ということで、保温フェーズでのフェイルオーバー機能はどんなタイミングで発動するようになっているかと言うと、

【保温時フェイルオーバーの条件】
120℃未満の場合 30秒以内に10℃以上 外部センサーでの測温値が下がった場合
120℃以上の場合 30秒以内に20℃以上 外部センサーでの測温値が下がった場合

保温フェーズで、この条件を満たした場合、自動的に外部センサーから本体センサーへのフェイルオーバーが実行されます。

室温25℃で、液面から外部センサーを外した場合の温度ドロップ一覧表

上の表は、室温25℃の環境で、鍋の中から外部センサーを外した場合、30秒間でどれぐらい温度ドロップが計測されるか、という数値です。

グラフにしてみると、こんな感じです。
つまり120℃以上(つまりは油温)の場合、油の中にある外部センサーを外すとわずか30秒で20℃以上も温度ドロップするし、120℃未満で外部センサーを外すと30秒でおおむね10℃以上温度ドロップするということ。
ただし、それほど大きく温度が下がるのは50℃までで、40℃になると温度ドロップは約7℃。つまり残念ながら今回のフェイルオーバー機能は、「設定温度が50℃未満の場合は効かない可能性がある」ということになるのでご注意ください。ただ40℃で加熱するのは、例えば「サーモンのコンフィ」のような極めて特殊な料理ぐらいでしょうから、外部センサーが液面から露出するような状態=調理状況が注視されていない状態、になることは考えにくいとも思われますが…

保温フェーズでのフェイルオーバー機能が誤検知する場合(水温)

 前述したとおり、フェイルオーバー機能が外部センサー外れを検知しない場合というのは室温25℃の環境では設定温度=50℃未満の場合でした。(もちろん周囲の環境が30℃とか35℃といった室温の場合は、さらに高い設定温度でも検知できない可能性はあります)
では、逆に普段の調理をしているのにフェイルオーバー機能が誤って発動してしまうのは、どんな場合でしょうか?
実際に90℃に設定した鍋料理で実験してみると、冷蔵庫から出したばかりの肉や野菜をかなり大量に投入しても、温度ドロップはせいぜい5℃以下でした。ということは大抵の煮物料理では30秒間で10℃も温度が下がるような事態は起きないはずです。
今まで実験したところでは、煮物料理で現実的に起きる可能性がある動作は以下の1つのみでした。

鍋料理をしていて、つゆが減ったので冷たい割下を大量に投入した

これは、現実的に十分あり得るシチュエーションです。

この時の対処方法は簡単です。フェイルオーバー機能によって本体センサーへコントロールが移行していると、Repro本体右側にある「センサー切替ボタン」のLEDが、本体センサーを表示する赤色になっているはずです。
そうしたら落ち着いて数秒から数十秒待って、温度ドロップが一段落したところでセンサー切替ボタンをタップします。青色のLEDになったら、また温度コントロールが外部センサーに戻ったことを意味しますので、そのまま鍋料理をお楽しみください。

保温フェーズでのフェイルオーバー機能が誤検知する場合(油温)

 油温、つまり揚げ物で30秒間で20℃温度が下がるというのも、かなりの量の食材を一気に投入しないとなかなか起こりません。

1.0リットルの油(170℃)に厚さ2.5cmの冷蔵庫から出したばかりのとんかつを投入しても、温度ドロップはせいぜい5℃前後です。それにReproは一定値以上の温度ドロップを検知すると、すぐに温度を戻そうとフルスロットルで加熱を開始するので、その火力に打ち勝って?20℃以上も温度ドロップするというのは相当なものです。
これまでで誤作動が起きる状況に最も近かった(と想定される)ケースはこちらです。


この場合は、1.5リットルの油(165℃)で、300gはある賀茂なす まるまる1個分を素揚げしています。

賀茂なすのしぎ焼きの温度ドロップグラフ

水分量の多い賀茂なすを素揚げした場合、Reproが全力で元の温度に戻そうとしても温度ドロップは進みます。
それでも、その場合のドロップ値は1分30秒で約16℃です。
水分量の多い具材を、かなり強烈にたくさん投入しない限り30秒間で20℃ドロップというのは起きにくいはずですし、ユーザーの方は、そもそも一定の油温で揚げ物をしたいからReproを使っているはずなので、今回のフェイルオーバー発動条件を超えるケースは極めてレアなのだと思います。

それでもフェイルオーバー機能がじゃまになる時は

 ここまで縷縷説明してきましたが、飲食店やホテルの場合、意図的に大量の食材を投入せざるを得ない場合もあるでしょう。
意図的にフェイルオーバー機能を停止させたいこともあるかもしれません。
その場合は、以前にコラム記事で説明させていただいた初期加熱フェーズでのフェイルオーバー機能の場合と同じです。

セッティングモード>機器基本設定>フェイルオーバー機能 でOFFを選択して決定ボタンをタップしてください。これにより初期加熱フェーズでも保温フェーズでもフェイルオーバー機能は完全に停止します。
ただしフェイルオーバー機能をOFFにする場合は、くれぐれも外部センサーがきちんと作動しているかどうかご確認することをお勧めします。

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