伝統的なのにスタイリッシュなそのフォルムは、見るからに美味しいごはんが炊けそうな合羽橋の老舗「釜浅商店」の「釜浅のごはん釜」。
人気沸騰で、買おうと思って申し込んだら、なんと1年待ち。
「バルミューダ社のライスポット」が自社の鍋「ライスポット」を使った自動炊飯器であるように、Reproを使って、この人気沸騰の「ごはん釜」を「半自動?炊飯器」にしてしまおうというのが今回のたくらみ。
美味しいごはんが炊けるっていうのはもちろん、ミニマルデザインなReproに「ごはん釜」を搭載すると、ちょっとハイブリッドな近未来感?も醸し出されます。
Reproはあらゆる調理家電の「ベース部分」です
自動炊飯器とかスロークッカーとか、保温ジャーとか、コンビニに置いてある「おでん保温器」とか、すべからく世の中にある加熱・温度管理系の「専門調理家電(もしくは業務専用器)」ってものは、専用容器と加熱温度制御部の2つの部分から成り立っています。
つまりはReproのような温度制御デバイスの上にそれぞれの目的にあった専用の容器が乗っている構造なのです。
Reproと違うところはその目的や温度が単一なこと。
(「炊飯器」とか「保温ジャー」とか「おでん保温器」とか)
Reproのように、いろんな目的で、いろんな容器(鍋やフライパン)を温度管理しようとすると、その難易度が格段にアップしてしまうのですが、「温度管理技術」は、容器と目的を限定してしまえば、意外にかんたんな側面もあります。(軽く自慢です)
さてそんな つまらない自慢はともかく、「釜浅のごはん釜」でごはんをどう炊くのか? 熱烈なファンも多そうだから失敗するとヤバいかも…
でも強い味方を発見したので安心!
釜浅商店さんが動画で「釜浅のごはん釜」の使い方を丁寧に説明してくれています。ので、これをもとにReproに移植すればよいはず。
この動画を要約すると火入れのポイントは以下の3つです。
(1)弱火で8分間加熱する。
(2)強火で2分間沸騰する。
(3)弱火で10分間加熱する。
(4)火を止めて10分間蒸らす。
Repro的には、この「弱火」とか「強火」とは「ホントは何℃のことですか?」もしくは「出力は何Wですか?」とか定量的に知りたくなってしまうのですが、
動画で釜浅のスタッフさんがかなり親切に火加減を説明してくれているので、それを元に数値を推測(単なる勘ですが)して実験すること数回。言わば「Repro語」に翻訳したレシピが以下の通りです。
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弱火で8分間加熱する=沸騰レベル+0.0で8分間加熱
- 強火で2分間沸騰する=沸騰レベル+3.0で2分間加熱
- 弱火で10分間加熱する=沸騰レベル-1.0で10分間加熱
- 火を止めて10分間蒸らす=待機ステップで10分間加熱停止する
「なんでReproのくせに、◯◯℃って厳密な温度じゃなくて沸騰レベル=火力でレシピ書いているの?」という向きには、現在の調理学の教科書のもとにもなっている静岡県立大学の貝沼やす子先生らの
をお読みになることをお勧めします。
この名論文には
「すなわち、好ましい状態の飯に炊き上げるには, 直接の加熱操作を含むか含まないかは別として、98℃以上の温度に少なくとも約20分はおく必要があることがあきらかになった」
と書かれています。つまりは温度についての言及は「98℃以上を20分間」ってことだけ…。
まあ、そりゃそうでしょう。
「おこげ」を除けば、水分は100℃より上にはならないので、つまりは「100〜98℃の2℃の間にいる=98℃より下げるなよ」ってことなのでしょう。
この論文が書かれたのは1982年。
すでに40年前で、現在の炊飯では20分間も98℃を維持する必要はないと思われますが、まあ炊飯においては、「温度の微細な変化より火力=熱エネルギーの加え方」が大事なようです。
(これはあくまで「おコメの温度」の話で、炊飯器の鍋の表面温度や鍋内の気体温度・気圧はこれとは別のお話になります → 炊飯器メーカーさん 話を単純化してごめんなさい)
ということで難しい話は置いておいて「釜浅のごはん釜(炊飯3合)」というレシピの完成です。お米を研いで1時間浸漬(浸水→シンスイ って良く言いますが、正確な用語は、浸漬→シンセキ だそうです)して、ふたをして、Reproに置いてスイッチオン!
となれば簡単なんですが、このレシピにはひとつだけ「裏ワザ」が必要なんです。
「裏ワザ」と言ってもスタート時にボタンを2回押すだけなので…
1時間お米を浸漬した「ごはん釜」をReproにセットします。
レシピを本体に送信したら、スタートボタンを押して加熱を開始します。
ここが重要な「裏ワザ」です。スタートボタンを押して加熱開始したらすぐに、左から3番目の「OKボタンを長押し」してください。
このグラフはReproにおける「沸騰」アクションの挙動を表しています。
「沸騰」とは「沸点近くで一定のぐつぐつ具合で煮たい」ということですから、まずは沸点近くまで(Reproの場合、デフォルトで97℃となっています)最初はフルパワーで加熱していき、97℃に近づくにつれて少しづつ火力を落としてスムースな加熱曲線でオーバーシュートせずに接近。ついに97℃になったら本来設定していた目標火力(このグラフでは200W)を一定に維持する、ということになります。
ところが、「OKボタンを長押しする」という裏ワザを使うと、上のグラフの「初期加熱フェーズ」の部分をすっ飛ばして、97℃になっていなくても(というかたとえ常温でも)、「一定火力フェーズ」に強制的に移行させてしまいます。
裏ワザは「始めチョロチョロ…」をやりたいから
なんでこんなトリッキーなことをするのか?
それは「高性能自動加熱マシンRepro」の「自動高出力制御機能」をわざとOFFにして、最初っから出力をしぼって、チョロチョロした火加減で加熱したいからなんです。
釜浅商店さんの動画にも「10分かけて沸騰させます。8分かけて弱火で…」とありました。
実は先ほどの貝沼先生たちの研究にも「あまり早く沸騰させるより、10分ぐらいかけて沸騰させる方が…」とあるのです。
そう、みんな「始めチョロチョロ…」っていうアレをやりたいようです。(「10分かけて沸騰」が本当に正しいのかホントは分かりません。最近は一気に沸騰させるやり方もよく使われていますし…)
と、やや異論はあるものの、この「始めチョロチョロ」をやるために「スタートボタン→OKボタン長押し」という裏ワザを生み出したわけですが、言葉で説明するより実際はとってもかんたん。「作り方動画」をこしらえたのでごらんください。
裏ワザを忘れるとごはんが炊けなくなるのでご注意
とてもかんたんだったでしょう?
ただこの「OKボタン長押し」を忘れるといつまで経ってもごはんができなくなるのでご注意ください。
鋳鉄は熱伝導率が低く、IHコンロの場合「鍋底に高温の温度ムラ」を起こしやすい素材です。
もしOKボタン長押しを忘れて、Reproが本来の「高性能自動運転スポーツカー」としてのポテンシャルを発揮して、最高出力(1400W)でスタートダッシュを開始すると、あっという間に高温の温度ムラが鍋底に発生します。
するとReproのセンサーはすぐにこの異常を検知し、鍋底の温度が下がるまで加熱を一時停止してしまうのです。ここだけはくれぐれもご注意を。
ここまで色々話してきましたが、結局「ボタンを2回押すだけ」ってことに時間を費やしただけで、実際の作業は「ごはん釜」をReproにセットしてボタンを2回押しただけです。
すると「STEP01 沸騰レベル+0.0 8分間」が勝手に始まり、8分間経つと勝手に「STEP02 沸騰レベル+3.0 2分間」へ移行して、ごはん釜の中からぐつぐつと快調な沸騰音が聞こえてくるはずです。
もちろんふたは閉めたままですが、中を覗いて見るとSTEP02の「沸騰レベル+3.0」は、このぐらいの沸騰具合です。
2分間の強火沸騰タイムが終わると、ごく弱火にして10分間加熱を続けます。(いわゆる98℃以上をキープし続けるという部分です)
その「STEP03 沸騰レベル-1.0 10分間」の沸騰具合はこんなかんじ。
そして最後の蒸らし時間「STEP04 待機 10分間」の状態がこちらです。ここが土鍋だったり肉厚の鉄鍋だったり「素材の蓄熱性(断熱性)」が問われる部分です。もし素材の蓄熱性が低ければ、蒸らしの段階でどんどん温度が下がり、98℃を割り込んでしまいますから…
そしてついに完成!
今回は「島根県飯南産の特別栽培米 こしひかり」を使いましたが、甘みといい、柔らかさ具合といい最高の仕上がりでした。
遂に完成した自分だけの「釜浅のごはん釜 自動炊飯器」(ボタンを2回押すので本当は「半自動」ですが…)
今回言いたかったことは、
「Reproでレシピを作る」=「新しい自分好みの調理家電を作る」
という場合もあるということ。
ここが、Reproがこれまでの調理デバイスとは違う次元にあると感じるところです。
と言うことで「staub派」には、炊飯専用鍋「ラ・ココット de GOHAN M」を使ったRepro開発チームの炊飯(2合)レシピがすでにあります。
ちなみにこれはパラッと炊け、うな丼とかカツ丼とか、いわゆる「ごはんを汚す系」のレシピに向いている炊きあがりで、お米の種類もササシグレやササニシキなど銀シャリ系がお勧めです。(現在はもう少し柔らかめに炊いて、お米の甘さと汎用性を広げるレシピも開発中です)
他にもル・クルーゼを自動炊飯器にしているユーザーもいらっしゃるみたいで、いろんな方が自分の好きな鍋を使って自分好みの仕上がりになる炊飯器を作るなんて素晴らしいと思いませんか?
「ボタン2度押し問題」は、これが巨大メーカーさんだったら「2度押しなんて、絶対ダメ!」でしょう。
まさにそこの自動化へのひたむきな努力が「消費者の安全が最優先」という現在の日本の家電のスタンダードを作ってきたのだと思います。
もちろんRepro開発チームの中でも「2度押し問題の解決方法」はすでに見つけています。
ただ、悩ましいのは、
押すボタンの数が少ない→自動化が進んでいる→それしかできない≠汎用性
みたいな側面があることも事実です。
専用調理家電とPC(=Repro)の違いは、
専用調理家電 → その目的をパーフェクトに実行するが、良くも悪くもそれ以上のものでも以下のものでもない。
PC(=Repro)→ 何かの課題を乗り越えるために、たまにカスタマイズや裏ワザ・新しいやり口を考える必要性があるが、常に今とは違う様々な使い方をユーザーやメーカーが生み出していく未知の可能性がある ということです。
すでにReproはIHにかけられる圧力鍋をコントロールすることが可能になっています。これによりRepro開発チームがビーフコンソメ(正確にはブイヨンを取るパートですが)を取る時間は飛躍的に短くなりました。詳しくはRepro開発チームレシピ「ビーフ・コンソメ 2(ブイヨン編)」をご参照ください。
圧力鍋を自動(半自動?)でコントロールできるのは、ちょっと画期的なほどに手間がかからなくなります。
こんな風にすれば本格的なグリアードのツールとしての可能性も。こうした鉄板グリルのプロファイルなども今後さらに収集していく方針です。
最近は何か不思議な「醸す系」の実験のためにReproをご購入されている大学の先生もいらっしゃるようですし、これまでのヨーグルトメーカーなどの代わりにヨーグルト、納豆、甘酒、塩麹などを作っているユーザーもいっぱいいらっしゃるようです。
「Reproの上に乗るべきものは何か?」
それを見つけることが革新的な未来を見つけることにつながるのかもしれませんよ。
Repro公式サイト http://www.repro.jp/
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