さよなら強火。6万年ぶりのイノベーション?

 人類がいつから火を使い始めたか?には諸説あるようですが、少なくとも6万年前からネアンデルタール人が料理に火を使っていた事は間違いないようです。
最初は「焚き火」に始まり、それが時代を経るにつれて「かまど」や「いろり」、「オーブン」などへと進化し、現代のガスコンロやIHコンロに至っています。

現在ではスチコン、高性能オーブン、湯せんタイプの低温調理器など正確な温度コントロールができる製品が世の中に出回っていますが、いわゆる「コンロ」(煮る・炒める・揚げる ができて、使える鍋・フライパンに汎用性があるという意味)で正確に温度管理ができる製品はRepro以外に見たことがありません。
Reproと似た?製品はどれも、煮るだけとか炒めるだけとか機能が限定されているか、容器(鍋)が専用のものしか使用できないとか、いずれにせよ温度管理の正確性と引き換えになにがしかの「汎用性」を犠牲にしています。

でもコンロの最大の特長は煮る・焼く・揚げると何でもこなせる、その汎用性です。1台でさまざまな料理をこなすことができる「コンロ」は、加熱調理機器の元祖であるネアンデルタール人の「焚き火」の まさに正統な後継者。
スチコンや電子レンジ、湯せんタイプの低温調理器は、それにしかできない機能を持っていますが、「スチコンのドライ加熱」はやはりフライパンで炒めるのとは違いますし、湯せんタイプの低温調理器は、均一に火が入ったローストビーフを作るには最適ですが、スープを作ったり、鍋料理をするには向いていません。

そしてコンロのもう一つの誇るべき汎用性は、その上にさまざまな鍋やフライパン、やかん、グリルなど、あらゆる調理道具を載せて使えるということです。
しかし「汎用性」と「正確性」は常にトレードオフの関係。コンロはその汎用性のゆえに、スチコンや湯せんタイプの低温調理器のような正確な温度管理ができず、6万年の間「弱火・中火・強火」で通してきたのでしょう。

Reproの鍋プロファイル選択画面

鍋プロファイルシステム

「コンロの汎用性を損なわず、正確な温度コントロールをする。」
この命題を解決するために、Reproは「鍋プロファイル」という画期的なシステムを導入しています。
Repro開発チームは、さまざまな鍋を入手しては、鍋底が○○℃の時に鍋の中身の水温は△△℃、フライパンの底が○○℃の時にフライパンの表面温度は△△℃といった熱伝導特性のデータ(実際にはもっと詳細なデータ群ですが)を収集・検証しています。
ユーザーはスマホアプリで必要なプロファイルを検索し(個別の鍋・フライパンの製品名でリストされています)、そのプロファイルデータを本体に送信することにより、さまざまな鍋・フライパンを使えるようになります。
Repro開発チームの「プロファイラー」たちがこれまでに作成した鍋プロファイルは約250個。(2021年12月22日現在)
そしてこれからも、さまざまな鍋・フライパンを入手しては精密な温度検証をし、最適なプロファイルを増やしていくという地道な作業に日々励んでいるのです。

さよなら強火

Reproが目指している未来は「さよなら強火」です。
例えばクックパッドのレシピに「おしょうゆ 小さじ1」とか、材料の分量が定量的に書かれているのが当たり前のように、火加減も「弱火でコトコト」とか「強火で一気に」ではなく「○○℃で△△分加熱」と普通に書かれている未来、今Reproを使って調理実習をしている女子大生の後輩たちが5年後ぐらいに「平成の頃は弱火・中火・強火って言ったんだって。なんのことだろうねえ〜」とキャンパスで楽しくおしゃべりしている未来です。

IH卓上コンロの高級スポーツカー

 Reproは、自動車で例えれば、ポルシェやフェラーリのような高級スポーツカーのようなものです。(自分で言うな、ってかんじですが…苦笑)
現代のこうしたスポーツカーの特長は、商店街へのお買い物など、普段使いも気楽にできる普通乗用車としての完成度を持っているけど、そのままサーキットに行けばちょっとしたレースを楽しめるポテンシャルも持っているという、ある種の二面性です。
Reproも同じで、最先端のシェフが極めて高度な料理を作るのにも使えますが、普段の晩ごはんでも十分快適に働いてくれます。

Reproの一般的な使い方は、まず最初にスマホ・タブレットの公式アプリで、お使いの鍋やフライパンのプロファイルを検索して本体に送信しておきます。(この作業は最初の1回だけです)
その上で、アプリ上に公開されているレシピ(レシピ一覧から検索)や自分で作ったレシピ(アプリのマイレシピページに表示されます)を本体に送信し、鍋と具材を揃えたら外部センサーを鍋にセットしてスタートボタンを押すだけです。(慣れてくると、プロの料理人の方や管理栄養学科の女子大生たちはアプリを使わず本体で直接ピコピコ設定してますが…)
つまり、通常の使い方の範疇なら「ワンタッチ」とまではいかなくても、「ツータッチ」か「スリータッチ」ぐらいで料理が作れるイージーさを持ち合わせています。

Reproで焼き餃子

つまりは「エクセル」のようなものです

 それでもやっぱり「操作が難しい」って声があるのは事実です。
つまみをひねるだけで火が付くガスコンロと比べれば、Reproは遥かに多機能で、その分操作しなければいけないボタンもたくさんあることは確かです。

実際、Reproの中身は「PCとIHヒーターが組み合わさったもの」です。
パソコンのようにCPUが搭載されています。
例えれば、従来の「弱火・中火・強火」のコンロが「そろばん」だとすれば、ReproはPCを買って表計算ソフトの「エクセル」をインストールしたようなものです。
それまでそろばんをはじいていた昭和の人が、ある日突然PC&エクセルの組み合わせを渡された時のインパクトは相当なものだったでしょう。
同様に、これまで長い間ガスコンロのお世話になっていた人にとってReproは当時のエクセルと同じぐらいの「敷居の高さ」を感じるかもしれません。
でも「エクセルが難しいからそろばんに戻る」って言う人は令和の時代にいませんよね?
それにエクセルは完成度の高いソフトで複雑な関数を豊富に持っていますが、大抵の計算はSUM関数(合計)とAVERAGE関数(平均)ぐらいで事足りたりてたりしませんか?

ちなみにReproはエクセルより遥かに簡単です。
なぜなら「加熱(低)30〜99℃」、「加熱(高)100〜200℃」、「沸騰」、「待機」、「ループ」、「終了」の6つしかコマンドがありませんから。
エクセルの関数の総数は486、たった81分の1です。

いずれにせよエクセルからそろばんに戻る人がいないように、歴史の流れは不可逆です。遠くない将来「○○℃で△△分」っていう時代が到来することは間違いありません。コンロの世界にも遅ればせながらデジタル化の波が来たのです。
あとは「習うより慣れろ」です。いや「怖れるより学ぼう!」です。

Reproで炊いた黒豆

頑張ったごほうびは調理科学の成果です

 では頑張って「エクセル」をおぼえた、もとえReproの操作方法をおぼえた「ごほうび」って何なのでしょうか?
その1つは、調理科学の研究成果を日々の料理に応用できるということでしょう。

調理科学?そんなものおうちの料理に関係ないよ。」

そう言わずに、ちょっとだけがまんして聞いてください。
この数十年の調理科学の進歩は目覚ましいものがあります。無数の論文の中には、「あるハードル」さえ超えられれば、一般家庭でも十分に役立つものもたくさんあるんです。
その「ハードル」とは、加熱調理の研究はすべて厳密に温度管理された実験環境で行われているので、大がかりな専用機器がない一般家庭や店舗では正確に再現できない、ということです。

例えばお正月の黒豆。きれいに炊くのは「おばあちゃんの専売特許」で、皮が破れたりシワが寄ったり、なかなかうまくできません。
でも、2013年に発表された兵庫県立農林水産技術総合センター北部農業技術センターや神戸大学の研究は衝撃的です。

「黒豆は60℃で2時間予熱してから炊くと皮が破れる歩留まりが良くなる」

その方法でReproで炊いた黒豆が上の写真です。すごくきれいに炊けてませんか?
黒豆を炊く時には、よく前の晩から水に浸します。でも実際はこの「浸水」(正しい用語は「浸漬」ですが)をすると、皮が水を含んで膨らむスピードより、豆が水を吸って膨らむスピードが速いため、皮が破れたりするのです。
それが60℃で2時間煮てあげると、2つの速度がそろい、裂皮率(皮が破ける割合)が急激に下がるのだそうです。
でも一般のキッチン(家庭でも飲食店舗でも)で「60℃ 2時間」を正確に再現するのは、Reproのような機器がない限り無理な相談なので、これまで一般に普及してきませんでした。(きっと工場などではこの研究成果を有効活用していると思います)

Reproでトマトの湯むき 90℃ 30秒間

黒豆以外にも素晴らしい研究はたくさんあります。

さといもは水から煮るより、沸騰したお湯で2分間茹でる方がぬめりが取れる

これは後に東京家政大学の家政学部長になった河村フジ子先生が、なんとまだ高校生だった1970年に発表した論文の要点です。それにしても、「ぬめり取り」の研究に没頭する高校生って…

トマトの湯むきに最適なのは、90℃で30秒間加熱

こちらはさらにすごい。2013年に当時小学5年生だった千葉県の秋葉恒毅くんが発表した論文です。小学生とあなどるなかれ、実際にReproでやってみると本当にきれいにトマトの皮が剥けるんです!

と、まあ調理学の世界では「早熟の天才たち」が驚くべき業績をあまた残しています。
なんかわくわくしてきませんか?

こんな「おトク研究」がJ-STAGE(無料電子ジャーナル 各分野の研究論文が網羅されています)をのぞくと山のようにあります。
この「お宝の山」を放っておくのはもったいない。

現在の調理学界で加熱調理研究の頂点に君臨しているのは、香西みどり前日本調理科学会長が率いてきたお茶の水女子大学。香西先生は若い頃に「いつかReproのように温度管理できる製品が登場する時代が来る」と思い、加熱調理研究の道に入ったそうです。
こうした慧眼の先人たちの業績を、今こそ一般家庭やレストランのキッチンでも活用すべきでは?

Reproで作るサーモンのコンフィ

 もちろんシビアな温度管理を求められるものは調理科学の研究成果だけではありません。
例えば、オーストラリア シドニーにあるレストラン「Tetsuya’s」の和久田哲也シェフのスペシャリテ「タスマニアサーモンのコンフィ」。40〜45℃でサーモンをコンフィするもので、世界中の料理人たちがインスパイアされた有名なルセットです。
最先端のシェフたちは、とっくの昔からこうしたシビアな温度管理と向き合ってきました。こんな最先端の料理も、加熱温度・時間が分かり、Reproがあれば家庭のキッチンで簡単に再現することができます。

最後になりましたが、Reproの名前の由来を。

cuisine reproducer 定量的なレシピを正確に再現する者

ここまでReproの説明にお付き合いいただきありがとうございました。
次回からは、具体的なRepro開発チームのレシピを紹介していきます。

Repro公式サイト http://www.repro.jp/

Repro公式Facebook https://www.facebook.com/Repro.jp

Repro公式Instagram https://www.instagram.com/repro_official/

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