料理に使う調味料の「さしすせそ」順番の謎 なぜ味噌の前に醤油が最適なのか

料理にはさまざまな要素が組み合わさって、その美味しさが生まれます。食材の鮮度や調理方法も重要ですが、一流の料理人も忘れてはならないのが「さしすせそ」です。
この5文字は、砂糖、塩、酢、醤油(せうゆ)、味噌という基本の調味料のことを指し、それぞれが持つ特性や役割が料理の完成度を大きく左右します。

さらに興味深いのは、この調味料が一定の「順番」で使われることが多いという点です。一体、この順番がなぜ重要なのか、それにはどんな「理由」が隠されているのでしょうか?

料理の「さしすせそ」の基本

まずは、それぞれの調味料が料理にどのような影響を与えるのか、そしてこの独特の順番がどのように形成されたのかについて詳しく解説します。

何の調味料が含まれるのか

前述のとおり、「さしすせそ」とは、砂糖(さ)、塩(し)、酢(す)、醤油(せ)、味噌(そ)のことです。この5つの調味料は、日本料理の多くのレシピで基本となるもので、それぞれが持つ特性や風味が料理の味の決め手となります。

砂糖は甘みを加え、料理の味をまろやかにします。一方で、塩は味を引き締めるとともに、食材の持つ本来の風味を引き出します。酢は酸味をもたらし、料理に爽やかさや独特の風味を加える役割があります。醤油は日本料理に欠かせない調味料で、色味とコク、そして塩分を提供します。最後に、味噌は発酵食品であり、料理に深い旨味とコクを加える効果があります。

この5つの調味料は、単体で使うだけでなく、組み合わせることでさまざまな風味や効果を生むことができます。たとえば、砂糖と塩を組み合わせると、甘塩っぱい味わいが楽しめます。また、酢と醤油を合わせると、独特の酸味とコクが生まれ、料理の幅が広がります。

このように、「さしすせそ」に含まれる調味料は、日本料理において多様な表現を可能にする基本的な要素と言えるでしょう。それぞれが持つ特性を理解し、適切に組み合わせることで、料理はさらに一層美味しくなります。

なぜ“さ→し→す→せ→そ”の順番なのか?

では、なぜ「さしすせそ」の順番になっているのでしょうか?
この順番は、調味料が持つ特性や料理に与える影響、さらには保存性や歴史的な要素に基づいています。

まず、砂糖(さ)が最初にくる理由は、甘みが料理の基底となる風味を形成するからです。甘みは他の味と組み合わせやすく、料理全体をまとめ上げる効果があります。

次に塩(し)が続くのは、塩分が食材の水分を引き出し、砂糖と一緒に使うことで味のバランスを整えるためです。

3番目の酢(す)は、酸味が料理に爽やかさをもたらし、特に肉や魚の臭みを消す効果があります。また、酢は保存料としての側面もあり、歴史的には保存食を作る際に重要な役割を果たしてきました。

4番目の醤油(せ)がは、多くの日本料理で使われる基本の調味料であり、独特の風味と色を料理に与えます。醤油は塩分も含むため、前の調味料とのバランスを考慮する必要があるため、いきなり使うべきではありません。

最後に味噌(そ)がくるのは、発酵食品であり、料理に深いコクと旨味を加えるためです。味噌は他の調味料と比べて風味が強いため、最後に加えることで、他の調味料が持つ味や風味を引き立てます。早く入れすぎて煮立たせてしまうと、せっかくの風味が飛んでしまいます。

このように、各調味料が持つ特性や料理に与える影響、そして歴史的な要素を考慮すると、「さしすせそ」の順番がこのようになった理由が理解できます。

この順番は、日本料理が長い歴史と多様な食材、調理法を経て形成された結果とも言えるでしょう。それぞれの調味料が持つ特性を最大限に活かすために、この順番が受け継がれているのです。

「さしすせそ」の順番を守らないとどうなる?

気になるのは「『さしすせそ』の順番を守らないとどうなるのか?」という点です。
本や動画などでレシピを見ていても、調味料をあらかじめ混ぜておいて投入する方法が紹介されていたりします。実は調味料をあらかじめ混ぜて投入した場合と、「さしすせそ」の順に投入した場合では有意差はないことを示す研究結果が存在します(松本仲子, 小川久惠. 調理方法の簡便化が食味に及ぼす影響―調味の順序について―. 日本食生活学会誌. 2007)。

しかし、実際に料理をする際は調味料の適切な分量を決めずに、味見しながら味付けを決めることも多いはずです。醤油や味噌を先に入れてしまうと、素材本来の味わいに気づけなくなったり、微細な調整が難しくなったりする恐れがあるので、味見しながら料理をする時は、「さしすせそ」の順番を守る意義もあると言えるでしょう。

各調味料の役割と特性

ここでは、砂糖、塩、酢、醤油、そして味噌の特性と役割に焦点を当てます。

砂糖(さ)の役割

砂糖は料理に甘みを加えるだけでなく、その他の調味料との相互作用によって料理全体の風味を高める役割も果たします。

また、食材の持つ自然な甘みを引き出す効果もあります。煮物や炒め物に少量の砂糖を加えることで、食材自体が持つ甘みや旨味が際立ちます。

香りをつける際にも砂糖を用いることがあります。砂糖が熱を加えてカラメル化反応(キャラメリゼ)を起こすことで、香ばしい香りを料理にもたらします。

他の調味料との相互作用によって、料理の風味を複雑にするのも砂糖の特徴です。たとえば、砂糖と塩を組み合わせると、甘塩っぱい味わいが生まれ、多くの料理で使用されます。また、砂糖と酢を組み合わせると、甘酸っぱい風味が生まれ、特にアジア料理でよく見られます。

保存料としても機能するので、ジャムやシロップのような長期保存が必要な食品には欠かせない存在です。

砂糖の種類によっても、料理に与える影響は異なります。白砂糖、黒砂糖、きび砂糖など、それぞれに特有の風味や色があり、料理によって最適な砂糖は違ってきます。

塩(し)で得られる味の変化

塩は、料理において非常に多様な効果を持つ調味料です。

まず、塩は食材の水分を引き出す作用があります。これは特に肉や野菜に顕著で、塩を振ることで食材が持つ水分とともに旨味成分も引き出されます。この効果は、煮物やスープ、炒め物など多くの料理で活かされています。

水分を引き出す作用は食感にも影響を与えます。魚を焼く際や肉を焼く際に塩を振ると、表面がしっかりと焼き上がり、中はジューシーに仕上がります。

味の面では、バランスを整える効果があります。たとえば、甘い料理に少量の塩を加えると、甘さが際立つ一方で、くどさが減少します。逆に、塩辛い料理に砂糖を加えると、塩味が和らぎ、全体の風味がまろやかになります。

塩にも砂糖と同じく保存作用があります。特に漬物や塩漬けに使われることが多く、塩分が高い環境では微生物の活動が抑制され、食品の腐敗が遅くなります。

酢(す)とその効果

酢は料理に爽やかな酸味を加えることで、全体の風味を引き締めます。特に、油っぽい料理や重たい料理に酢を加えると、その油分が軽減され、食べやすくなります。また、肉や魚の臭みを和らげる効果もあります。これは酢が持つ酸性が、臭みの原因となる物質と反応して中和するためです。

砂糖や塩と組み合わせることで、新たな風味を生み出します。甘酢ダレやピクルスなどでは、酢と砂糖、塩が絶妙に組み合わさって多層的な風味が生まれます。

酢には食材の色を鮮やかにする効果もあります。たとえば、アントシアニン色素を持つ野菜を酢水にさっとくぐらせることで、鮮やかな色を長持ちさせることができます。これは、酢が酸性であるため、色素が変色しにくい環境を作るからです。

また、酢は保存料としても使用されます。酢の酸性は微生物の増殖を抑制するため、ピクルスや酢漬けなどの保存食には欠かせません。さらに、酢は砂糖や塩と組み合わせることで、新たな風味を生み出します。たとえば、甘酢ダレやピクルス液などでは、酢と砂糖、塩が絶妙に組み合わされ、多層的な風味が生まれます。

酢にもいくつかの種類があり、それぞれに特有の風味と用途があります。たとえば、米酢はまろやかな酸味があり、寿司や和食によく用いられます。一方で、ワインビネガーやアップルサイダービネガーなどは、それぞれ独特の風味があり、洋食やデザートに使われることもあります。

醤油(せ)のバリエーションと使い方

醤油を使った料理こそThe和食と思う人も多いでしょう。それほど日本において非常に多用される調味料であり、種類も多岐にわたります。醤油の種類によっては、特定の料理や用途に最適化されているものもあるので、特性を理解することが重要です。

一般的によく使われるのは「濃口醤油」です。これは特に煮物や炒め物、寿司などによく用いられます。濃口醤油は色が濃く、風味も豊かで、料理に深みを与えます。

次に、「薄口醤油」は色が濃口よりも薄く、風味も控えめです。主に明るい色の料理や、風味を損ないたくない繊細な料理に使われます。たとえば、ちらし寿司やお吸い物などに適しています。ただし、薄口は一般的に濃口よりも塩分濃度が高いため使用量には注意する必要もあります。

ここでは割愛しますが、他にも「たまり醤油」「再仕込み醤油」「白醤油」などの種類があります。

最近では減塩タイプや無添加タイプ、有機など、健康志向の人々に対応した商品も増えています。

醤油の使い方一つで、料理の風味は大きく変わります。たとえば、醤油を先に加えると、料理全体がその色に染まりますが、最後に加えると、醤油本来の風味を楽しむことができます。また、醤油は煮詰めると塩分が濃くなるため、その点も考慮する必要があります。

味噌(そ)の特性と活用法

味噌は日本料理において多用される発酵食品であり、その種類と特性は非常に多様です。味噌は大豆や、麦、塩を主成分として発酵させて作られ、その発酵過程で生まれる多種多様な微生物が独特の風味と旨味を生み出します。

「白味噌」は甘みが強く、色も白っぽいです。この種類の味噌は、味噌汁や煮物、甘い味付けが必要な料理によく用いられます。特に、近畿や中国地方でよく使われます。

「赤味噌」は発酵期間が長く、色が濃く、風味も強いです。この味噌は、炒め物や焼き物、そして濃い味付けが求められる料理に適しています。特に、関東甲信越や東北、北海道の料理でよく見られます。

他にも白と赤を合わせた「合わせ味噌」や「豆味噌」、「麦味噌」などがあります。

また、最近では「味噌ペースト」や「液体味噌」など、便利な形状の味噌も登場しています。

味噌の活用法も多岐にわたります。たとえば、味噌のたんぱく質にはにおいを吸収する作用があるため、肉や魚の臭みを消し、旨味を引き出します。また、味噌とバターを組み合わせた「味噌バター」は、西洋料理にも使える多用途な調味料です。

味噌はまた、発酵食品には豊富な酵素や乳酸菌が含まれているため、消化促進や腸内環境の改善にも寄与します。

「さしすせそ」を補完する調味料

「さしすせそ」という五つの基本調味料が料理の基盤を築く一方で、その上に更なる風味や深みを加える調味料も存在します。ここでは、そうした「さしすせそ」を補完し、料理を一層引き立てる調味料に焦点を当てます。

日本酒とみりんの使い方

日本酒(料理酒)とみりん

「さしすせそ」の調味料が料理に与える影響を理解したうえで、その補完役としての「日本酒(料理酒)」と「みりん」の存在は非常に重要です。

「日本酒」は料理に深みとコクを加えるために使用されます。また、アルコールの蒸発によって食材の臭みを取り除く効果もあります。たとえば、魚を焼く際や肉を煮る際に酒を使用すると、その臭みが和らぎます。肉を柔らかくする効果もあるので、日本酒に漬けておく下処理の方法もあります。

「みりん」は砂糖と日本酒に似た成分を含む調味料で、料理に甘みと艶を与えます。特に、照り焼きや煮物などでよく使用されます。みりんは砂糖とは異なり、アルコール分がありますが、これが食材と結びつきやすく、風味を閉じ込める効果があります。

また、みりんは酢や醤油と組み合わせることで、新たな風味の層を作り出します。たとえば、みりんと酢を合わせると、甘酸っぱい風味が生まれるため、サラダドレッシングやマリネに適しています。

日本酒とみりんは、それぞれが持つ特性を最大限に活かすためにも、量と入れるタイミングが重要です。酒は煮物の初めに加えることで、食材の臭みを抑えられます。、後から加えると、アルコールの風味が残ります。みりんは煮詰めることで甘みが凝縮され、風味が高まります。

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