Reproが、他のIHクッキングヒーターと決定的に違うのは「外部センサー」というパーツが付属されていること。
今回は「キホンのキホン」に立ち返って、どうして「外部センサー」を使わなくてはいけないのか?を考えてみたいと思います。
目次
本体センサーと外部センサー
Reproには、トッププレート中央に「本体センサー」があり、付属品として「外部センサー」が付いています。使いこなしているユーザーであれば、
「Reproには鍋プロファイルシステムがあって、使用する鍋のプロファイルを送信すれば、本体センサーで正確な温度管理ができるんでしょ?
それだったら外部センサーなんて要らないんじゃない?」
とお考えになっても不思議ではありません。それなのに取扱説明書でも、公式サイトでも、Repro開発チームのレシピでも、しつこいくらい「外部センサーがセットできる料理は、必ず外部センサーをご使用ください」と注意喚起しています。
それは、「本体センサーで正確な温度管理できる」ためには、いくつかの「条件」を満たしていなければいけないからです。
【条件1】プロファイルデータはあくまで「基準水量」でのデータです
公式アプリのプロファイル詳細画面を見ると、左上の鍋の写真の下に「基準水量」が表示されています。
通常の鍋だと満水量の約1/2、寸胴鍋やポットなどでは満水量の7分目ぐらいの量が「基準水量」と規定されています。そして「本体センサーで計測した鍋底外側の温度が◯◯℃の時に中の水は△△℃」という鍋プロファイルのデータは、「基準水量の場合」という条件のもとで検証された数字になっています。
当然ながら基準水量より煮汁が少なければ設定温度より実際の水温は高くなりますし、多ければ低くなります。実際の料理で、常に基準水量ピッタリで作ることは難しいので、「少々の誤差が出てもいいよ」と言うなら別ですが、できるだけ正確に温度管理したい場合には、外部センサーで直接水温を測る方が、はるかに有利です。
【条件2】鍋底に具材が沈殿していると測定温度は不正確になります
こちらは【条件1】より、かなりシビアな問題です。
ここで出て来るのが「比熱」です。昔、学校の理科の授業でお勉強したと思いますが、物質にはそれぞれ「温度を1℃上げるためにどれくらいの熱量が必要か?」というものがあり、その熱量は物質によってさまざまです。
「比熱が高い」ものは、温まりにくく冷めにくいですし、「比熱が低い」ものは温まりやすく冷めやすい、ということになります。
ちなみに1リットルの水を1℃上げるのに必要な熱量が「1Kcal=1キロカロリー」ですが、比熱は「J=ジュール」という単位でよく表現されます。ちなみに「1キロカロリー=4184ジュール」です。
ということは水の比熱は4184J、鉄の比熱が444Jですから、なんと水は鉄の10倍近くも温まりにくく、水を加熱するにはそれだけたくさんの熱量が必要になるということです。
では「食品」の比熱はどうでしょう?
当然、水分を多く含んだ食品ほど比熱は高いわけですが、結論から言うとヒトケタ、つまり2Jとか4Jとかです。油になると0.1Jとか0.2Jとかの単位。そのぐらい食品の比熱は低く、つまり水と比べると1000〜2000倍ぐらい、下手すると1万倍ぐらい温まりやすく冷めやすいことになります。
本体センサーで常温から湯豆腐は厳しいです
適当な絵で申し訳ないのですが、これはReproの上に鍋を置き、その中で「湯豆腐」を作っている図です。赤枠の部分が「豆腐」だと思ってください。
ちょうど本体センサーの上に豆腐が鍋底に接するように置かれています。この状態で加熱すると、豆腐の比熱は水よりはるかに低いので、急速に温まり、また豆腐直下の鍋のステンレスも急速に温まるので、本体センサーは、まだ水が冷たい状態でも「もう目標温度に到達した」と錯覚してしまいます。
つまり煮物で具材が鍋底に沈殿して接してしまうと、本体センサーは正確な温度測定ができなくなってしまうのです。
水に浮く具材や、煮汁だけで目標温度まで加熱してから具材を入れれば、この「湯豆腐問題」は解決しますが、常温から本体センサーで湯豆腐を作るのは厳しいです。
鍋底に金網を敷いて、直接豆腐が鍋底に接しないという方法もありますが、そんなことをするくらいなら、素直に外部センサーで加熱した方が楽チンです。ちなみに豆腐は75℃ぐらいから熱変性してタンパク質の構造が変わり、中に含まれている油分が漏れ出して、元々の豆腐らしい(大豆らしい)風味が損なわれるので、湯豆腐は75℃以下で温めるのがお勧めです。
ふたを密閉しなければいけない料理はどうするの?
圧力鍋については、「Reproで圧力鍋が使えるのご存知ですか?」をごらんいただければ解説していますが、それ以外で、
「常温から沈殿する具材を入れて、ふたを密閉しなければいけない料理」
というとなかなか思い当たらず、一番身近な料理は「炊飯」でしょうか。
「赤子泣いてもふた取るな」
と言いますが、これはちょっとウソです。と言うか、薪など火力の弱かった時代にふたを取ると温度が下がってしまい、また適正な温度に戻るまで時間がかかった時代の名残でしょう。
現在のガス火にしてもIHにしても火力が強いので、和食屋さんなんかでも、炊き込みご飯を作る途中で具材を入れるためにふたを開けたり、炊き具合を確認するのにふたを開けたり、平気でしています。
特に沸騰するまでは、ふたが空いていてもまったく問題ありません。ご参考までにRepro開発チームの「炊飯2合(staub)」というレシピをごらんください。これはstaubの「ラ・ココット DE GOHAN」という炊飯専用鍋の取扱説明書にある通りの作り方をReproで再現したレシピで、沸騰するまでは外部センサーを使い、ぐつぐつとなったらスキップボタンをタップし、外部センサーを外し、それ以降はふたをして本体センサーで測温しています。
本体センサーふたありの料理は多くが沸騰アクションで加熱するタイプ
調理学の教科書的には、炊飯は98℃以上を一定時間維持することですから、少なくとも水分が十分にある限り98〜100℃の間にする火力が求められるだけで、1℃刻みの温度コントロールは必要ありません。
と言うか、温度一定よりも、一定の熱量(火力)をどのタイミンでどれだけ与えてあげるかが重要なので、本体センサーは過熱状態になっていないか?などをモニターしているだけです。
これならば、「沈殿する具材を入れて、ふたを密閉しなければいけない料理」も本体センサーでこなせるというわけです。
つまり、ふたを密閉して加熱する料理の多くは、「温度一定」より「火力一定」、つまり「沸騰アクション」で加熱するものが多いのかと思われます。
ということで、普通の温度一定にコントロールしたい煮物は、なぜ外部センサーを使うべきなのか、そしてふたを密閉して、あえて本体センサーで加熱したい料理を作る場合のコツもお分かりいただけたでしょうか?
粘性が高い煮物は、本体センサーの方が良い場合もあります
最後にもう一つ、ふたを密閉しなくてもよいのに「あえて本体センサーで調した方が良い」と言うパターンをご紹介します。それは、
「あまりに粘性が高く、対流しづらいので外部センサーで正確な測温ができないもの」
です。つまりかなり粘性の高いカレーやシチューだと、外部センサーをセットしても鍋底から加熱された液体の温度をセンサーが検知するまでにタイムラグが生じ、不必要にぐつぐつになってしまうことがあります。これは粘性と分量によって、どっちのセンサーを選択した方がより良いかはケース・バイ・ケースになります。
特にボロネーゼ(ミートソース)のように、煮詰まるにしたがって粘性が次第に増し、最後はほとんど固体に近い状態になるような料理は悩みどころです。
実際の調理の際に、ぐつぐつ具合と煮詰まり具合を判断して、センサー切替ボタンで外部・本体センサーを切り替えて様子を見てください。もちろんその時は、どちらのセンサーを使っていても、いやそれがガス火でも普通のIHでも、頻繁にかき混ぜて「温度ムラ」が発生しないようにご注意ください。